寂しい時だけでいいから 公演情報 劇団フルタ丸「寂しい時だけでいいから」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    住宅展示場で繰り広げられる幻影、幻想(偽装)家族の団欒物語。主人公が見る幻影を通して「孤独」や「家族」の問題が浮き彫りになって行く。その観せ方はユーモアの中にペーソスが感じられる、そう人生の哀歓を思わせる不思議な公演。
    (上演時間1時間45分)

    ネタバレBOX

    舞台は理想のマイホームが並ぶ住宅展示場。セットの中央はダイニング、楕円形のテーブルに椅子、上手側はベランダが見えるガラス戸、下手側は別スペースとして子供部屋であり屋外の喫煙スペースを現す。正面上部に住宅展示場の警備員の詰め所があり事務机が2つ置かれている。所々に観葉植物が置かれ高級感溢れる仕様の展示場になっている。

    梗概…この住宅展示場の警備員・林トキオ(宮内勇輝サン)は仕事にあまり責任も誠意も持たず唯々諾々とした仕事、生活態度である。日中の賑わいが消えて住宅展示場という街が闇に包まれ、孤独なトキオは展示場を歩く。
    ある日、煙草を喫うため先輩からもらったマッチを擦ると、夜中にも関わらず展示場に明かりが灯る。そこでは家族の楽しい語らいがあり、いつの間にか自分も招き入れられて…。

    現実と幻想の世界が交差し、心の内にある混沌とした感情が…。可視化できない感情は、それまでの暮らしぶりと現在の展開し出した生活の間に表れる思索と諸相によって浮き彫りになる巧みさ。実家とは距離を置き、帰省もしないトキオが幻想家族の一員であることで心の安らぎを覚えている。もちろん仕事振りにも好影響が出てきた。

    家族は単なる遺伝子で繋がる人の集まりと言ったシニカルな捉え方のようにも思える。表層的にはマッチを擦ることで現れる幻影は、「マッチ売りの少女」を連想させる。マッチ売りの少女は金銭的な貧しさ、一方トキオは心が満たされない貧しさという「物」「質」の違いはあるが、どちらも救いがあれば…。そんな寂しさにホッとした安らぎを思わせる公演であった。
    また、先輩警備員・岩切(フルタジュン氏 作・演出)と展示場の来訪客が大学の同級生であり、就職活動を通して生き方の違いが説明される。そこに人間が持っているちよっとした意地悪、嫉妬、羨望等が垣間見えて先に記した可視化できない”心”というものが見えてくるような気がする。とても意味深であり観応えある作品であった。

    次回公演も楽しみにしております。

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    2018/06/02 16:12

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