満足度★★★★
鑑賞日2018/05/29 (火) 19:00
価格2,800円
桟敷童子お得意の弱者庶民伝にしてある共同体の崩壊劇、そして「純和風悲劇」。
先日観たオフィスパラノイア「幕末異聞 明治悪党奇譚」、昨年観た野生児童「純惑ノ詩」とも歌舞伎を元ネタとするアレンジ物ながらシェイクスピア的な部分とギリシア悲劇的な部分があり、悲劇のルーツはやはりあのあたり?と思ったのに反して本作はそういったものが感じられず、極めて日本的ではないか(後から改めて考えるとギリシア悲劇に通ずるものはあったがさほど強くない)、強いて言えば伝統芸能的な部分もありつつ、自らの弱さに負けた人物によってもたらされる悲劇というのは独特ではないか?と思ったのだった。
そういえばシェイクスピアにしてもギリシア悲劇にしても「運命に操られるように」という要素が色濃いのではないか? それに対して本作はその要素よりも特定の人物によるものが大きいのではないかと。
そして悲劇でありながら終わってみると思ったほど重さが残らないのは元凶である人物が本当にダメ人間で、自分はあそこまでは堕ちないという安心感のようなものがあるからではあるまいか?
そんなこんなでクライマックスの装置の仕掛けも含めて桟敷童子の世界を堪能。
ところで「財布のエピソード」が半端で浮いてはいまいか?そこだけちょっと引っかかった。