てあとろもびる 公演情報 劇団てあとろ50’「てあとろもびる」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    おもちゃ箱のような楽しさ。
     ディズニーランドのアトラクションのように楽しい作品だった。大隈講堂前に集合して、劇場である都電に向かう間も様々な仕掛けがあり、わくわくどきどきしている間に終了、あっという間の二時間だった。

     都電を借り切っての公演。早稲田から三ノ輪まで片道53分を往復する旅。町並みを楽しみながら二本の芝居が見られるという観客にとってはぜいたくな企画だが、役者にとっては多分過酷なステージだったろう。音楽も照明も助けてくれない。また、電車の中というのはそれだけでうるさいのである。狭い空間と言っても劇場よりはるかに声を張らないと聞こえない。そのため細かい感情表現が出来ない。それにハプニングだらけなのである。貸し切りと言っても各駅には一般の都電の客がいる。そして、電車は登場人物を登場させたり退場させたりするために駅に止まるのだ。そのたびに一般の客も乗ろうとする。そういった様々なハプニングへの対応力が求められる。確かに役者を鍛える場としては最適だと思ったが、やってる方としては気が気でなかっただろう。

    ネタバレBOX

     そして観客として参加して始めてわかったことだが、電車をステージにするということは、観客をも登場人物にしてしまうということなのである。われわれは演じる役者を見ながら、同時にそれを見つめる観客も見、また見られるという関係だった。完全な観客参加型の演劇である。

     行きと帰りに2本のドラマを見るというオムニバス方式も面白かった。それぞれが別の作品でありながら、『別れと新しい旅立ち』という共通テーマをひとつ持っている。どちらも登場人物が電車を降りることで終了するのだが、そこから始まる新たな人生を観客それぞれが想像(創造)することが、この劇の奥行きである。
     
     1本目の作品「コンプレックストレイン」ではロッカーの彼が電車を追いかけて走ってくる姿には感動した。これこそ電車内公演でしか出来ない演出。劇場では得られない盛り上がりを見せた。望むらくは彼に電車に追いついてもらい再度乗り込んでもらいたいと思ったが、それは人間業では出来ないことか。

     2本目の作品「ポケットを希望で満たせ」は予定調和的に、手品の大道具の中から歌のお兄さんが出てくるところがクライマックスだが、その後にピアノのお姉さんまで出てきたのにはびっくりした。中でずっと隠れていた役者はほんとに大変だったと思う。拍手を送りたい。

     先ほど書いたように演技が張りがちになるとか、作品的にも細かい部分を言えば未完成な部分が多いのだが、劇場を飛び出したという勇気にまず敬意を表したい。

     てあとろもびる、動く劇場というような意味なのだろうが、世の中どんどん簡単で便利になってくる。携帯電話の便利さなどすでに生活に欠かせない。そういった時代に演劇だって、もっと手軽であってもいいんじゃないか?もっと簡単に、もっと短い時間で、もっと気軽に楽しめてもいいんじゃないのか。そういった色々な意味まで題名に込められているとしたら、この劇団、なかなか出来る劇団ではある。

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    2009/03/01 17:28

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