満足度★★★★
狂ってる。
ヒトはどのような状況で、どのようになるのか、これはひとつのフィクションでもあり、ノンフィクションでもあるのかもと。
そして、多分、このような感情を観劇中に持つことはあまり、自分は無かったのだが
辰沢役(小野ゆたかさん)が自分が帝銀事件をやったと語る場面で、「お前がやったのかよ」と睨んでしまった。
罪に対しての態度というか(劇中そこがどの役柄もポイントだと思うが)それを観た瞬間、苦しんで死んだ8歳の子どもが私の脳裏に浮かんだ。
「お前が殺したんだ」と何故だが、分からないが物凄く憎しみの感情がうまれてしまった。
きっと、余りにも、「死」に対しての彼らの感じ方が怖すぎたのかもしれない。
だから、「狂ってる」と感じた。
「戦争だから」
「命令だから」
「医学の進歩の為だから」
戦後生まれた自分にとって
戦争中の心理はあくまでも「想像」でしかない。
何故、人が人でなくなってしまうのだろうか。
「殺される」状況になったら「殺さなければ、自分が死ぬ」と
思う。
ただ、自分はそのような状況になった事が無い。
ただ、「戦争」はそれが日常であったのだから「しょうがない」という理由になるのだろうか。
731部隊は、戦時下において一種、異なった狂気ではなかったのか。
研究者たちは、あの状況を「天国」と思っていたのか。
あの状況を「おかしい」とは思わなかったのだろうか。
思ってはいなかったのだろう。
何の制約も受けず、「普通」であれば倫理が邪魔するであろう「実験」、いえ、「殺人」を思う存分出来たのだから。
その「殺人」を行って、得た多くのデータは彼らにとっては、煌めくものだったのだろう。
「もっと、もっと、データを・・・」
戦争が終わり、日本へ戻ってきた彼らは
「死」を恐れた。
自分達の身の安全を、仲間を見張りながら絶えず、見えない恐怖に
怯えている事を隠しながら、生きようとしていた。
これは、物語だろうか。
人間はこうも、醜いのだろうか。
これが、物語だ。
人間は、こうも、醜い気持ちを持っている生き物だ。
葛藤もある。
しかし、彼らはけして、あの実験を後悔してないのだろう。
何かのせいにして、
けして、「自分」が悪い訳ではないと思ってる。
大なり、小なり、私もきっと、同じような考え方をすると思う。
あの焼け野原で残った建物の一室で
今もきっと、同じように
会話をしてる影が見えるかもしれない。
そう、感じた公演だった。