満足度★★★★★
鑑賞日2018/04/28 (土) 14:00
座席1階D列10番
28日午後、中野のテアトルBONBONで上演された西瓜糖第六回公演『レバア』を観てきた。西瓜糖を初めて観たのは数年前。その舞台が気に入り、以後、椿組とのコラボを含め今回が4回目の鑑賞となる。
舞台は終戦まもない東京のある洋館。持ち主は作家先生で、戦災で宿無しの被災者を無償で住まわせている。その洋館に住む、先生以下、焼き鳥屋、黒紋付きの芸者、キャバレー?の女給、たばこを作る爺さん、どこか育ちの良い家庭の母子、先生の娘、そして一番新しく住むことになる復員兵が織りなす人間悲喜劇。後半、この話『レバア』というタイトルに関わる主人公が復員兵と先生の娘であることが明らかになるが、それが衝撃的な印象を与えるのは、それまで舞台で繰り広げられてきた戦後の日本を生き抜くために各自が知恵を絞って生み出した活きる術。それを描く過程の脚本の密度の濃さと、役者達の巧みな演技に、気持ちも身体も舞台に釘付けとなる。登場人物が全員重要な鍵を握っていて、それが連鎖的に各自の運命に関わっていく。恐ろしいというか、悲しいというか、滑稽というか、その生き様に思わず自分の人生を振り返り重ね合わせ嘆いてしまう観客がいる。
役者達は、いずれも芸達者。主人公も脇役も重要性は均等に持たされている。その脚本の完成度と、演出の巧みさに思わず脱帽状態。
今年に入って幾つか良い舞台を観てきたが、この西瓜糖の舞台を観てそれらがみんな吹き飛んでしまった。実に充実していて中身の濃い、言葉に言い表せない重みを含んだ舞台であった。
西瓜糖、恐るべし。脚本と演出と役者に人を得ると、このような重みのあり内容の濃い芝居が作れる見本のような作品になる。こうした作品に出会えて嬉しい。