満足度★★★★
この劇団お得意の歴史事件ものである。三億円事件は面白かったが、これは70年前、となるとさすがに観客も馴染みがなさそうだ。満州の731はもっと古い話で、軍隊亡き今ますます縁遠い。いつもの通り、会議ドラマであるが、今回は少しすべった。
一つは内容で、事件ものをやるならそれが、今上演される時代と何らかの意味でつながらないと面白くない。帝銀事件の真犯人探しは、今の客にはなじみが薄すぎるし、731はさんざんドキュメンタリーで掘り返されていて、どうにでも作れるが新鮮さに欠ける。劇場が犯行現場の椎名町に近いとか、被害者が運び込まれたのが隣りの聖母病院だ、などと言う事は末梢的なことしかな
い。今やるなら、化学兵器に現代人としての科学者がどう向き合ったか、と言う事に尽きると思うが、そこは深みがなく科学者の「生活」と「良心」と言った程度の議論に終わっている。15年前の作品と言うが、こういう劇は時代とともに書き直していかないと観客の気持ちをそいでしまう。連続公演に水を差すようだが、歌舞伎でも、「洗う」と言って、再演の度に洗い直して工夫しているのだ。それが生でやる芝居の義務でもある。
二つ目は、この劇団の俳優の力である。もっとちゃんと訓練して舞台に上がってほしい。この小さな劇場で後ろの席(たった5列!)に声が届かない。劇場に不相応に空調があって音が大きいと言う事もあるがまず、俳優の声をそろえるという基本が出来ていない。ちょっと横に振ると聞こえなくなる。こういう「技術」はちゃんと学ばなければ。舞台なんだからその不自然は俳優が克服することだ。