R老人の終末の御予定 公演情報 ポップンマッシュルームチキン野郎「R老人の終末の御予定」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    人間が滅びた後、ロボットは人間に限りなく近づいていくのか。
    “ロボットのアダムとイブ”となったカップルのいきさつが秀逸。
    それにしても被り物もここまで来れば怖いものなし。
    私が好きなのはブレーカーです。

    ネタバレBOX

    冒頭から同じ衣装の老人二人が登場。
    死期が近い天才科学者辰郎(加藤慎吾)と、彼が作ったロボットメカ辰郎(NPO法人)である。
    残される妻八重子(小岩崎小恵)を思ってのことだった。
    そしてメカ辰郎は、順調にその役目を果たして行く。

    辰郎と八重子の時代からおよそ千年後、地球はロボットと家電の世界になっている。
    ヨドバシファミリーのエレキギター・グレコ(野口オリジナル)と
    ビックファミリーのポット・ハミー(平山空)は、
    まさにロミオとジュリエットのような恋人同士だが、両家の争いはついに全面戦争に突入。
    二人の恋の逃避行のさなか、グレコは古いチップを見つけ装着してみる。
    それは千年前、最初のロボットを創った人間の記憶が読み込まれたチップだった。
    両家の戦争は、そしてグレコは傷ついたハミーを救うことが出来るのか…。

    相変わらずバカバカしい被り物軍団が、キラリと光る真実をついている素晴らしさ。
    それにしても良く出来た衣装(?)だなあ、ポットとか洗濯機とかダイソンとか。
    衣装が大きく特殊なので、誰も落とした小物を屈んで拾うことができず、
    とうとう「えーい!」と足で袖へ蹴り込んでしまうのは、演出かなのかアクシデントなのか(笑)

    当日パンフで配役を見ないと誰が演じているのかわからないほど顔を塗っているが
    エレキのグレコ役・野口オリジナルさんが、いつもの華奢なイメージを覆す骨太な存在感。
    声も力強く新たな一面を見せつけて強烈な印象を残す。

    相変わらず達者な老けぶりを見せるNPO法人さん、
    楽しんで演じている余裕が伝わって来る高橋ゆきさん、
    共に安定感があり、安心して観ていられる。

    荒唐無稽な設定と見た目の可笑しさの中に鋭く問いかけて来るのは
    「ロボットの進化とは、限りなく人間に近づくことなのか?」という疑問だ。
    限りなく人間に近づくことは共存を困難にすることを意味し、
    その結果人間はロボットに滅ぼされてしまったのだ。

    ロボットは互いを攻撃しないという設定を超えて、
    メカ辰郎は古くなって故障した妻、ロボット八重子の電源を引き抜く。
    そして新婚旅行で行った熱海の海岸で、自らの電源をも引き抜いて息絶える。
    安楽死や自殺という本来設定に無い行為に及んだ時点で、
    ロボットは限りなく人間に近づき、もはやロボットではなくなっている。
    こういう場面では横尾下下さんの何気ない台詞が、実に深い意味を持つ。
    ロボットにも死後の世界があり、夫婦は又会える、と告げる場面がいい。
    最古のロボットリオ(加藤慎吾)の孤独な最期も忘れられない。

    吹原幸太さんは、いくつもの層を掘り当てながら観る楽しみを与えてくれる。
    それはそのまま作者の洞察の深さと、鋭い観察眼を表している。
    ホント、人は見かけによらないなあといつも拍手しながら思う。
    吹原さん、ありがとう。

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    2018/04/21 01:35

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