山の上のHOTEL・別館~2018~ 公演情報 劇団カンタービレ「山の上のHOTEL・別館~2018~」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    ”山の上”のHOTEL・別館というタイトルは、観終わって納得。チラシ説明からは想像出来ない展開、そして秀逸なラストに感動する。
    過去の記憶に囚われ彷徨い続ける魂…その人達が日本全国から集まって「第1回超常現象閣僚級会議」を開催するという。果たしてその会議の内容と行方は…
    (上演時間1時間45分)

    ネタバレBOX

    舞台セットは、「山の上のHOTEL・別館」のフロアー。上手側に木棚とカウンター、下手側奥に窓、手前にソファー・テーブルのセット。メイン舞台以外に、出入り口脇に別スペースを設けている。HOTELは山奥にあり、ここなら津波で浚われる事もなかっただろう。

    2つの物語が同時に進行し、ラストに交差し収束する展開である。まずチラシの説明にある、このホテルに特殊な能力を持つ若者が集まり「第1回超常現象閣僚級会議」を行う。その招集者はHOTEL支配人の妹・山中友里で、まず自己紹介を兼ねて、それぞれの超能力…透視、物体移動、念写、予知、スプーン曲げ、事象操作などが披瀝される。
    一方、この山奥には刑務所があり脱獄犯が…。2つの物語は、東日本大震災・原発事故という共通した点で交わる。設定は事故4年後になっており、その傷が癒えていない。脱獄犯に拘束されたメンバーは、犯人の境遇や今後の行動を聞くことで、自分たちの思いと重なり…。

    心痛に耐えない震災・原発事故を超常現象という比喩的な場(会議)を設け、その被害者をブラックユーモア、悲劇と喜劇を巧妙に混在させ観客の心を揺さぶる。特に物質・環境汚染によってもたらされた人、その普通の人の”思い”を神経を尖らせしっかり伝えようとしている。ちなみに会議開催にも意味(霊魂の昇天)があり、ラストに明かされる。

    災害によって失われた夢・希望という未来、その悔しさが過去に捉われ、魂が彷徨し成仏できない。ラストは重い=想いを昇華させたようでホッとさせる。空想的な物語から社会的な物語に変化させ、面白さの中に今も、これからも考えさせるテーマをしっかり突き付けた秀作。

    役者の演技は、それぞれの人物像を立ち上げ見事でバランスも良かった。また舞台技術、特に照明は時間経過を順々に感じさせ、雰囲気作りも巧みであった。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2018/04/16 18:33

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