満足度★★★★
ホラの説得。
野田地図の新作というのは実は初めての経験。
賛否両論の噂が飛び交う中、コクーンのシートに座した。
野田がスケールの大きな物語を志向していることは、よく知られている。
だから、SF作品が今回初めてであるというのが意外なくらいである。
物語の話者が大きなホラを吹けば吹くほど面白い。
本作が、野田の信念に適った作品であることに違いはないだろう。
気になる点。
物語の進み方に、どうやって嘘をつこうかという手探りが見える。
結果として、たまたま今回の物語の着地点があっただけで、
別の着地点だって大いに考える余地がある雰囲気がある。
このクロニクルは、本当にあやふやな上で立っているのだ。
そのホラに説得されるのかどうか。観客は試されている。
主演陣・アンサンブルともに特に話すことはない。
まっすぐにホラに対して献身していたというだけのことである。
それだけで十二分な仕事であろう。
ただ一点だけ。
大倉孝二が大変な働きをしていることを忘れてはならない。
狂言回しと道化の両立をこれほどまでに器用にこなす人はいない。
カッコイイ。