満足度★★★★
題名とチラシを見て何か奇妙な味わいの物語というイメージを持っていたが、それは完全な間違いであって、人間模様を描いた伝統的な演劇であった。このトリスケリオン(三脚巴)とは3人芝居を表していると思っていれば観劇には十分である。あと少しの意味は劇中で分かっていくだろう。
内容は、亡くなった彫金師の工房に偶然集まった初対面の弟子、娘、イベント会社員の3人が数日の交流でそれぞれの人生でのわだかまりを解消していくというもの。登場人物はこの3人のみでそれぞれの演技がたっぷり楽しめる。中でも一番若い碓井将大さんには全体をコントロールしているような安定感があった。
粟根まことさんは「髑髏城の7人」の“鳥”そして“上弦の月”での“裏切り渡京”が脳に焼き付いていて、今回は粟根さんを観るのが一番の目的であった。おかしさは控えめだが、髑髏城では役柄の関係で観る機会のなかった渋い演技が心地良い。
観客は仕事帰りの女性会社員が過半であったが、子供から老人まで誰にでも安心して勧められるものである。