PIGHEAD 蠅の王 公演情報 ワンツーワークス「PIGHEAD 蠅の王」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

     原作のLord of the fliesから翻訳タイトルと状況設定という枠組みは借りているが、内容のテイストは、寧ろサルトルの「蝿」に近いかも知れない。(必見 花5つ☆)

    ネタバレBOX

    状況設定を借りているといっても絶海の孤島に閉じ込められた子供達を描いている訳では無論ない。原作からインスパイアされたのは、人間集団が隔離状態に置かれていること、その結果争闘が生じ尖鋭化してしまうことである。
     描かれる人間集団はサラリーマン。私見によれば、サラリーマンとは、即ち仕事ができるとかできないということより寧ろ人間関係のプロという印象が強い。国鉄民営化辺りから労使関係改悪の縺れ対策として、全国的に用いられた手法が苛めであった。その特徴は端的に言うと、苛めの陰湿化である。結果、親の背中を見て育った子供達が学校で、実に陰湿な苛めを実行することになったのは周知の事実である。
     以上のような社会観察から、自分が結論したのは、内実としては、ユマニスムの伝統を持つフランスで無神論的実存主義者であったサルトルが、その慧眼を以て民衆を含めて批判の目を向けている点が、そして蝿の王たるベルゼブブが人間の影の王として君臨する構造を明らかにしていることが、正しくユマニスムという単語の持つ主要な2つの意味、1つは人間主義とでも訳せようが、もう一つの何が人間かを観察する態度によって冷静に描かれている点である。ラストが読めない訳ではない。然しそれが舞台で視覚化されたことが与える衝撃は震撼すべきものであった。実際、背筋を戦慄が走ったのである。
     脚本・演出の素晴らしさ、隙の無い演技と効果的な面の使用、音響と照明の頗る効果的な使用、機能的な舞台美術がいやがうえにも醒めた緊迫感で迫ってくる。

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    2018/03/02 12:32

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