満足度★★★★
鑑賞日2018/02/14 (水)
淡谷のり子さんをモデルに、戦時中いっさい軍歌を歌わず、もんぺもはかず、無給で軍隊慰問をした女性歌手の物語でした。
背筋をすっと伸ばした戸田恵子さん演じる三上あい子のきりりとした美しさ、歌にこめた想いは胸を熱くし、涙が出ます。
そして、彼女が思いをこめて歌うその姿の前に、死を覚悟した若い特攻隊員たちが見えました。
「子どもは国の未来なのに、その未来を死に追いやるなんて・・。」
憲兵の葛西有道の高橋洋介さんが、あの時代の持つ非情さ、妄信さがもたらす頑なさを見事に演じられました。慇懃無礼な態度が、ホント憎たらしい!(高橋さんの大ファンで、彼目当ての観劇だったのですがWWW)威圧的な彼に負けない強さを持っていたあい子(淡谷さん)、凄いです。
高橋さんのイライラをぐっとこらえ目が光ってるのが、とっても怖かったです。
葛西の部下の中村正男を演じた岡本篤さん、命令に忠実で国のためにと一心に思っている、とても実直な様子に当時の多くの人たちが彼みたいだったんだろうな・・と、思いました。
情報を制限され、統制され、操作されたら、こういう風になるんだろうなと、だけどあい子に触れるうちにだんだんと音楽好きだった昔がよみがえってくるのが、切なく、温かく感じました。
高橋さんと岡本さんの対照的な二人の人物が、あい子の存在を際立たせ、あの時代の葛藤を見せてくれた気がします。
あい子を支えたマネージャー(大和田獏さん)、あい子を信頼してついてきたピアニスト(藤澤志帆さん)の存在も忘れてはいけません。彼らがいなかったら、あい子は自分の信念を貫くことは出来なかったでしょう。
そして、前線に部下を送る軍人の長内清美(鳥山昌克さん)の壮絶なる覚悟・・・・きっとこういう方も居たのでしょう。
侍みたいな人でした。
外国の歌は歌ってはならない、別れや哀愁ただよう歌は国民を弱くするから歌ってはならない・・・・嬉しい時に歌を口ずさむ、悲しい時に歌に癒される、元気が無い時に歌に元気を貰う・・音楽は人間の友であり、心の栄養です。それさえも制限されてしまう世界、音楽が洗脳に使われる世界、そんな世界だった時代があったと言うことが信じられないくらいに、色々な音楽があふれた現代に生まれた幸せを感じました。
ただ、現在もマスコミによる情報操作、印象操作があたりはばかることなく行われていて、こんなに情報量が多いはずなのに真実が見えなくなっていることが多いです。
マスコミは、まだあの時代から変わっていないように思います。
流されない自分でいたいと、強く思いました。
素晴らしい舞台をありがとうございました。