満足度★★★★★
鑑賞日2018/02/22 (木) 14:00
座席1階C列10番
「夜、ナク、トリ」このタイトルは、劇中でも触れられるナイチンゲールという鳥のこと。
別名、小夜鳴鳥、夜鳴鶯、墓場鳥とも言うらしい。この鳥は、劇中では黒くて気味の悪い鳥のように言われているが、鳴き声が美しく、褐色のかわいい鳥だ。
「ナイチンゲール」という命名が、どのような所以なのかは知らないが、言うまでもなく、この名前から想像するのは、かの白衣の天使である。
保険金殺人に走る4名の主人公たちを、看護師と墓場鳥の2面から比喩している素晴らしいタイトルだと思う。
吉田、石井、池上、堤、もの覚えの悪い私が、しっかりと役名を覚えるくらいに、この4名の主人公たちは強烈でした。特に、松永玲子の演じる吉田のキャラクターは最強(最凶)で、憐憫、懐柔、親身、恫喝と恐ろしくその表情を変えます。何と言っても、池上の夫殺しには、自分では一切手を染めない狡猾さ。
吉田の夫の死は、劇中で語られていませんが、殺人ではなかったのでしょうか。
単に、多額の保険金が入ったことに味を占めての、計画殺人だったのでしょうか。
未婚のような堤が、あれほどまでに吉田に従順なのはなぜなのでしょう。
池上に付きまとうようにいる、亡き夫の幻影。
吉田は、精神科医への相談を勧めますが、この幻影、妻に殺されたにもかかわらず、
妻の健康や行動をいつも心配して付き添っています。この距離感や、深い愛情は池上の願望?それとも本当の心霊現象?
堤は患者が亡くなったことに悲嘆しながら、保険金殺人の計画には余念がありません。
石井はひたすら殺人に疑念を抱いていますが、蟻地獄のような保険金殺人計画から抜け出ることはできません。そこには親友の幸せ、子供の幸せという、甘い餌がまかれているのですから。
4人の殺人行動の拠り所は「友情」。彼女たちには、裏も表もなく、常にその時に重要と思われる正しいことが存在するのです。
もちろん、その破綻は、暗に終幕で暗示されています。
日常に横たわる暗い闇。それはすぐそこにあるのです。