MOTHER 公演情報 庭劇団ペニノ「MOTHER」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    「地獄谷温泉 無明の宿」で岸田戯曲賞を受賞したペニノのタニノクロウ氏。そしてカスパー・ピヒナー氏が2015年に立ち上げたMプロジェクトの作品。ユニットのコンセプトは、観客自身を作品の作り手、一部として観客が自由に劇空間を動きながら作品を作り上げてゆくこと。(以上当パン参考に作成)

    ネタバレBOX

    結果、当然のこと乍ら役者から、観客に対する突っ込みなどの当意即妙なアドリブが入り、笑いも生まれる。
     劇空間に入る前にはスタッフから、お面と半球型で小型のライトが貸し出される。劇空間は消灯してあるから、観客は足元を自分のライトで照らしつつ慎重に劇空間を移動しなければならないのだが、この緊張感と暗闇がイマジネーションと童心の頃の悪戯心を最大値に向かって亢進してゆくから面白い。つまりワクワクするのだ。
     ところで会場内には、様々な器具、玩具等が予め配備されており、これらのものと役者達の関わりや遊びに観客が絡んでゆくことで劇が成立してゆく。暗がりのあちこちに置かれているこれら、遊具にアプローチする役者達の動きに沿うように観客達も自由に動き回るので、前の方に居る観客は、腰を屈めながら観ていたりするのも楽しい。一々の仕掛けも楽しいのは、それこそ、子供の頃秘密基地を作って遊んだ感覚を思い出させるからである。“人間は遊ぶ動物である”と喝破した哲学者も居たが、多くの文人墨客が座右の銘とする「梁塵秘抄」の一節“遊びをせむとや生まれけむ”を想起する者も多かろう。
     様々な遊具を用い、観客とのアドリブ的交感を経た終盤、プロジェクターに映し出されるのは「2001年宇宙の旅」のワンシーン。「美しき青きドナウ」の流れる中、プロジェクターからは星屑が溢れ出し、劇空間を覆ってゆく。そして会場の一隅からは、膨張する物体が現れどんどん肥大し、遂には天井に迄届く。この巨大な物体の前にシルエットのように浮き上がる、極端に小柄な役者達、役者達を囲む通常の背丈の観客を、巨大化した物が、相対化しサイズの大小など取るに足りないことと思わせながら、而もタイトルそのものに集約してゆくラストは圧巻である。この物体が何であるか、既に感のいい方にはお分かりであろうが、実際に観劇するとこの壮大なイマジネーションに感動できる。

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    2018/02/08 16:49

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