プレイユニットA→XYZ『200億の客船』/東京カンカンブラザーズ『ラブ・シャーク』 公演情報 東京カンカンブラザーズ「プレイユニットA→XYZ『200億の客船』/東京カンカンブラザーズ『ラブ・シャーク』」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    「ラブ・シャーク」…外国航路の豪華客船「パシフィック・マリン号」の船内、出航してから1時間の間に起こる乗客・乗組員の色々なトラブルを1コマずつのコメディとして描き、それをサスペンス風にして1つの物語として纏め上げて観(魅)せる。登場人物一人ひとりの立場・性格・思惑が丁寧に描かれ、人間関係もよく分かる。飽きることなく最後まで楽しめる作品である。
    (上演時間1時間50分)

    ネタバレBOX

    舞台は豪華客船内のサロンといった場所。2階部を設け中央に階段があり、正面に縦長楕円形のステンドグラスの窓。そして左右に客室へ通じる通路。1階部は上手側に食堂、テーブル・椅子の1セットが置かれ、下手側に豪華ソファーセット。本当に豪華客船内を連想させる見事な作りである。

    梗概…外国航路(102日間)の豪華客船「パシフィック・マリン号」が出航して1時間の間に起こる人間ドラマ。それを爆弾事件を契機に人間の本性が露になるという定番手法で描く。物語は乗組員が本船から乗客を救命ボートへ避難誘導させるシーンから始まる。見知らぬはずの乗客同士がいつの間にか繋がりを持つ。また乗組員と乗客が知り合いだったりする。その間に乗客(家族)の紹介、乗組員の船内での立場や性格をきめ細かに描いていく。乗客は4組(内1名は一人参加)で、女子中学生がいる夫婦、お笑い芸人とその彼女、夫人が妊娠している夫婦、そして訳ありの一人参加の若い女性である。一方、乗組員は初めての客船船長・機関士・料理人・食堂スタッフ・フロアー支配人とそのスタッフ・船医で、それぞれ強烈な個性を放っている。それらの人物像がみな魅力的に描かれる。特に船長・有村二郎(農塚誓志サン)の適当さ、フロアー支配人・鮫井朝美(棚橋幸代サン)の実直さの対比が面白い。さらに近海を漂流していた漁船の乗組員を救助するが、実はその男が原因で救命ボートを一艘失ってしまう。そして突然起こる”爆弾”騒動を通じてのんびりした船旅が一変する。

    見慣れたシチュエーションであるが、事件ともなれば犯人が誰で何の目的で実行しているのか…興味関心を惹起する。そもそも本当に爆弾が仕掛けられているのか、乗組員の隠密裏の確認・探索はいとも簡単に乗客に知られるところになる。それまでの個々の繋がりという人間関係が、いつの間にか全員で対処するという纏まりを見せてくる。船内という密室における究極の心理状態…右往左往するが、それほど緊迫感・切迫感は感じられない。

    船内という限られた空間と一定の時限を設けた設定だが、一般的な緊急事象に対しても同様の事があると思うのだが…。例えば、災害時の対応などは、建前としての協力・連携の重要性を説くが、一方、個々人の胸の内は自分を優先する本性・エゴが渦巻く。この外面の建前、内面の本音という矛盾した感情の両方を併せ持つ人間の存在こそが滑稽であり魅力的であろう。その様子をサラッとコメディタッチにして観せる物語はとても楽しく面白い。

    次回公演も楽しみにしております。

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    2018/01/25 18:23

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