満足度★★★★
青山円形劇場が閉めて、ほぼ同じ大きさの劇場がその近くのビルの地下にできた。しかし、円形が劇場機能をよく考えて出来ていたのに比べると、こちらは、そもそも初めからここで演劇をやるつもりだったか疑いたくなるような劇場である。歩く以外方法のない入口の狭い急階段三階分を降りると、なかの天井の低さ、照明の釣りの悪さ、舞台の高さのハンパさである。まぁ、それはいい。小劇場は場所を問わず、頑張ってきたのだから。
アメリカの小芝居である。こういう作品群のなかに時代の人情・風俗をわきまえた小粋な作品に出会えることがあるので、「ロングラン」という釣り書きにつられてみにいった。
ジャニーズの人気者の初の演劇と言うので、客は女性ばかり。男は三〇〇近い客席で数えて六人。内三人は、女友だちに引っ張られてやってきた居心地の悪そうな男たちである。
しまった!と思ったが、もう遅い。こういう公演にも時に昨年のグローブの「蜘蛛女のキス」のような作品もあるから頑張って見る。
昼メロでは主役を張れる男優(辰巳雄大)が本格的ギャング映画で新展開を測ろうと、役研究のために本物のギャング(田中健)に会いに行く。何やら大物らしいギャングは情婦(香寿たつき)と住んでいて、この女が昼メロの男優のファンだった、などと言う出だしはなかなかうまい。以下は、いかにもいかにもの話がどんどん転がっていって、さすがアメリカの商業演劇の脚本はよくできている。ことに正体が知れないギャングを演じる田中健が予想以上の大健闘で面白い。こういう役はどこかで正体をわるものだが、つぎつぎに割っていっても先がある。ボケなのか、ホントは怖いのか、最後までわからない。その戯曲を演出も役者も心得て膨らませているところがいい。女優でただ一人の香寿たつきは折角おいしい役なのに、キュートにもなれず、コメディにもできず、惜しい機会を逸した。辰巳雄大は初演だから、まずは無難な出来であるが、演劇への適性はわからない。
しかし、かなりの大物と言うギャングの家のセットがあまりにも安普請風で、色使いが悪すぎる。音楽も小編成の劇伴で、効果音と変わらない。
ロングラン企画の第四弾と言うが、とてもロングランの気概があるとは見えず、まずはファンクラブの年次総会の余興と言った出来であった。