満足度★★★★
ホエイは舞台に金をかけず、戯曲で勝負、役者は体で勝負。「珈琲法要」「麦とくしゃみ」に続き北海道三部作を完結させる今作は、時代を戦後、題材を炭坑町・夕張にとったお話。
台詞を聞いていると詳細なデータが踏まえられ、事実としては深刻だが、芝居はトボけている。
三部作の一作目が江戸後期に津軽藩から送られた開拓使の話だった事を思い出し、今更ながら北海道の歴史(有史)はごく短いという事実に思い当たる。(アイヌ民族は文字を持たなかった)
看過されがちなこの彼我の違い(沖縄の歴史意識も然り)を、作者山田氏はディテイル描写によって巧妙に際立たせる。
「珈琲法要」では病気になっていく過程を細かく幾段階かに分けて描写していた。ドラマ性を演出するならそこは見せなくて良く、想像させて共感を掴むのが得策なのに、それをやらない。
今作では、SEを一つも使わなかった。風や、水辺のさざ波や、木々のこすれる音など、背景に流れるだけでも情感が漂い、「郷愁」を揺さぶるだろうに・・。
この潔い(?)勝負の仕方は、演劇を「心地よさ」に浸る場所としない、こだわり故だろうか?
妙に味わいある芝居なのには、違いない。