あなたのこと、わたしとのこと 公演情報 TCU Creative「あなたのこと、わたしとのこと」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★

     僅か40分程の尺なのだから、(追記:前半余りに工夫がなかったので寝落ち、結果、自分の勘違いした点もあったので追記しておく。尚、追記部分は、ネタバレの最初のレビューから2行空けて書き始めてある。)

    ネタバレBOX

    物語にもっと緊迫感を持たせる設定にするなり、唯、退屈をやり過ごし、生きながら死んでいるような状況を描くなら完全にシャレノメス位のことをやらないと。科白を構成しているボキャブラリーが貧弱過ぎて唯でさえ平板な科白、状況設定が、尚ドラマツルギーから離れてしまった。美術も机と椅子である必然性が何処にも無い。座ったり、手を突いたりというだけなら、箱馬で充分。
     更に決定的な欠点は、人間観察の甘さが出てしまったことだろう。残念だ。


     タイトルに惹かれたのだが、殊に“のこと”と“とのこと”の対比に何かしらセンスを感じたのだ。だが、序盤余りにも扁平な“幸せ”・“愛してる”の多用が折角のセンスをぶち壊してしまった。この単語の一々に、感情や念いの千変万化を表現しているなら兎も角(これだけ多用すればそれも不可能)そういった配慮も見られずに、言葉の齎す印象に多少とも敏感な人間なら、この序盤だけで好い加減飽き飽きしてしまう展開である。
     男1と別れた女が男2と暮らし始めることで、小市民的な“幸せ”を成就することで、男1とは浮気関係に過ぎなかった男女関係自体はステイブルなものになり、それこそ、小市民的な幸せが成就しメデタシ、メデタシとなる訳だが、一方、手取り僅か18万の給料から不倫の代償として女は、男1の妻に対し300万の支払い義務を負うことになる。
     これがこの物語の粗筋だ。場転で机と椅子は対面に設置され、二人っきりでゆっくり食事を摂る場面等が展開するのだが、このどうしようもなく陳腐な“幸福感”を得る為に支払った女のリスクの大きさが漣のようなテイストで描かれる所が、如何にも日本ということか。
     残念なのは、序破急でも起承転結でもなく、前場、後場の作りになっていることだ。脚本で一場になっている部分は、導入というより前説の要素が強いのでイントロとしては頂けない。二場になっている部分が前場に当たるが、ここでもこれだけ同じ単語を繰り返す必然としての伏線が敷かれていないことが問題である。ここには、伏線としても、これらの単語を繰り返す必然を示すという意味でも他の言葉群に対してメタレベルで要になり、重心にもなるような一行がどうしても必要である。その上でなら、家裁の調停が入った上での示談にももっと説得力が出てこようというものだ。
     無論、主人公は女、市子である。何故なら男は、1,2という記号であるのに対し女は個人名であるからだ。それも市井の人を意味しているような名である。このことで、作家は女を般化したつもりなのだろうが、ポピュリズムに流れてしまっては、市井に埋没してしまうので、この点でも捻りが必要だ。演出レベルで言うなら、男が軽く扱われている分、1、2の区別をキチンとつける必要を感じなかったのかも知れないが、これでは観客が戸惑ってしまう。せめて片方には髭があるとかネクタイが違うとか、直ぐ様変わりできるような「記号」をつけるべきだろう。
     余りにも退屈な前半で寝落ちしてしまって、当初、その印象でレビューを書いたのが、配られた脚本を拝見すると自分のレビューにも誤解があった為、稿を改めた次第である。

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    2018/01/15 00:17

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