ハイサイせば 公演情報 渡辺源四郎商店「ハイサイせば」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    沖縄と青森の地方でやっている劇団の合同公演。作は青森の畑澤聖悟。およそ関係のなさそうな二つの地方の演劇人が合同でやる芝居だから、さぞ、ネタに困ったであろう。しかもほぼアマチュアであろうから長期の稽古も公演もできない。その悪条件をこなすのも畑沢聖悟はうまい。
    あらすじに出ている「お話」は苦肉の策ともいえる素材だが、立派に両地方の要望にもこたえ、ともに満足の結果だろうと思う。両地方とは遠い東京のアゴラでも普段は客の薄い日曜夜の7時半が超満席。75分の小品ながら、佳作と言える面白さだ。地方劇団の演劇活動と言う事は十分意義があり、また、畑澤の実績は十二分に評価するとして、畑澤、これでいいのか?と言うのはいつも気になる。
    これは、東京の観客からの感想なのだが、こんなに、芝居のツボを心得た劇作家は現在の都会在住の劇作家の中にも何人もいない。当然、東京からの注文もあって、昴に書いた「親の顔が見たい」は、非常に面白かった。この劇団としては珍しく再演もやったくらいだ。ほかにも、民芸や銅鑼、青年座など、観客組織にのった新劇団にはその注文仕切りのうまさを買われて書いているが、最初の昴のようなスマッシュヒットはない。新劇団の注文仕事は、内容を地方巡演まで考えて書かねばならず(今は予想外の頑迷な規制があり、これにひかかると無駄にエネルギーを消費するので、程よく書くことを求められるらしい)、劇団となれば、出したい役者もいるだろうからその注文もあるだろう。地方作家にとっては、それほど自由には書いていないと思う。一方、地元では実績があるから、これまたその要望に応えて、青函連絡船の話や、いたこの話も書かなければならない。畑澤は無論それに不服を言っているわけではないが、東京の観客としては、畑澤の、腰の据わった地方を舞台にした作品を見たいのである。贅沢を言えば、日本のチェホフのような。
    いま日本を芝居にするなら、地方都市、農村はいい素材になる。畑澤ならではの芝居が書けると思っているからだ。年齢的にも今が最後の、とは言わないがいい時期だろう。
    今は、独立の小劇場系のプロデュース公演も増えているから、この作家のいい戯曲を、公共劇場や劇団の注文でなく、座組みにも面白さの出せるプロデュース公演で見たい。誰か、トラムか、東芸地下あたりで、応分のキャストをそろえてやらないだろうか。例を挙げれば野木の「三億円事件」だってプロデュース公演は見違える出来だった。
    正直に言えば、今夜のこの芝居だって、東京在住の青森、沖縄出身の既成の俳優でやれば、もっと面白くなっただろう。地方の俳優にそれを言うのは酷だが、東京の俳優なら受けて立てるだろう。作者の側にしても、もっとケイコが出来れば、終盤の唐突な謎解きめいた終わりにしないで、戦争に巻き込まれる庶民に心情や言葉と言うものの魔力などを織り交ぜながら、さらに深いテーマを籠められたのに、と残念だ。

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    2018/01/07 23:23

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