声にならない 公演情報 空宙空地「声にならない」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    驚いた。いつもは分かりやすく心に響く空宙空地ですが、印象をどう表現すべきか直ぐには言葉が出ない。
    こんな表現の仕方があるんだなと目から鱗。

    以降はネタバレboxへ

    ネタバレBOX


    (続き)
    ダメダメな弟リョータ。関戸作品にダメ男くんは何度となく出てきたが、子供じみたり偏執的ではあったりしても、…感情や想いはストレートな気がして、割と理解の及ぶ人物像だった。

    しかし、この弟に対しては…言ってることが理解できない。

    何かに情熱を傾けることもなく、地道に人生・生活の基盤を築くこともなく、大丈夫・辞める・しょうがない…を繰り返す。
    情けない無為の果て…自業自得で、素のままでは哀切も浮かばない。

    兄マモルは弟リョータが思うほど傑出した人物ではない。無難に生きただけだ。だからこそ、兄への劣等感の果てとも思えない。その上、この芝居で彼の口から「言葉」で発信される想いは…何一つ無かったと感じられました。代弁すらなく、私は微かに困惑していたのが本音です…ラストシーンまでは!

    しかしラスト、彼は「兄が甥に傾けた愛情」を甥に語り掛ける。その言葉は稚拙で、おそらく言いたかったことの1%も表現されていないと思うが、…それを何度も何度も何度も語り掛ける。傍からは酔っ払いの態以外の何物でもない。

    それなのに、何でこんなに切ない。何でこんなに苦しい。

    空宙空地は今まで伝わる言葉で観る人の心を震わせてきた。
    今、敢えて「伝わらない言葉」で迫ってきたと思う。想いを表現する語彙を持たない…そもそも自分にも自分の想いが分からない…発散する術を持たずにもがき苦しむ人が主題なのだろうか。

    今の関戸さんは明らかに伝える術を持っているけど、同じ苦しみを礎にして今があるのだろうか…なんて想像もしました。
    …どんな人にも寄り添う「空宙空地」真骨頂の、また新しい一面でした。

    …ここで止めときゃ良いのに各論に発散(笑
    今回「役者の多役」がふんだんでしたが、明らかに多役だからこその面白さ。役の切り替えはコミカルで、救いのない本筋の空気を和らげる感じ。
    …歳に対する言い訳じみたセリフのメタ感も楽しかった。
    一方、序盤で母だった丹羽さんが、そのままの衣装で現れてるのに、セリフ無しでリョータに近づいてくる空気だけで「これは母じゃない…彼女だ…」と伝わってきた瞬間には、役者を観る醍醐味を感じました。
    おぐりさんのJC・JKも可愛かった笑。丹羽さんとのジェットストリーム「えんっどーくんっ」アタックはエンドレス動画化希望。

    キン肉バスター、メタルテープ、告白の歌テープ発掘、強風下の夢の欠片投てき話…随所のネタも楽しかった。これこそオアシス。(終

    追記です。
    本筋に戻るけど、冒頭の「リョータの体に投影するタイトル」は単体でも印象的で…すごく意味ありげに響きますが、くだんのラストシーンにも見事に絡み、私の困惑の中に見事に切り込んできて、深い切なさに誘いました。

    とても好きな演出です…

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    2018/01/05 00:53

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