満足度★★★★★
もう本当に楽しかった!
原作の魅力と、歌舞伎の気持ちいいところと、横内さんらしい作劇の面白さとがあいまって、初演以上にがっつりテンション上がった。
ストーリーのまとめ方は端正でわかりやすいが、演出はド派手だ。
たとえば水を使う場面。本水を使うのは歌舞伎でもときどき拝見するが、この舞台ではなんていうか、ちょっと驚くほどの膨大な量である。
立ち回りをしつつ滝のように勢いよく降り続く水をはね飛ばし、客席に向かって跳ね上げ、キャスト同士が水を掛け合ったりもする。(前方数列の客席には、水よけのビニールシートが配られている)走ってきた兵士たちが水浸しのステージに滑り込んだりもする。実際にはたいへんなことも多いだろうけれど、客席からは本当に楽しそうに見える。
あるいは、2幕の終わりにルフィーが宙乗りをする場面がある。何度も傷つき倒れながら、兄と慕う大切な人を助けるためにまた旅立つ、というシチュエーションだ。
ステージだけでなく場内全体に明るい光が満ち、テーマソングが響き渡る中、我々の頭上を飛びまわるルフィーの表情は明るい。苦難はまだまだ続くだろう、それでも仲間とともに船出する彼の眼には希望しか映っていないのだ。
同時に、たくさんのキャストが客席通路を踊りながら通っていく。観客とハイタッチし、手にしたタンバリンを観客と交換したりしながら。
ほとんどの観客が立ち上がり、頭上のルフィーや通路で踊る人々に手を振る。歌舞伎で、という注釈さえ必要ない、こんなに大勢の人々と一緒にこれほど盛り上がる、祝祭めいた芝居をこれまで観たことがあっただろうか、と考えたりする。
観ていて、歌舞伎というジャンルの懐の深さを感じた。脈々と続く伝統に裏打ちされた技術と人材と様式、そして新しいモノを受け入れる柔軟さで、またひとつ大きな軌跡を産みだした。
横内さんの作品として個人的に好きな作品は他にいくつもあるけれど、多くの人の心を動かしたという点において、しばらくは横内さんについて語るとき「ワンピース歌舞伎の」という形容が外せないだろう。