満足度★★★★
妻を亡くした男が夢を叶えようとしてあがく姿と、徳川吉宗が将軍へと上り詰めていく様子を重ね合わせ、シェイクスピアを思わせる波瀾万丈の物語として描いていく。
妻を殺したのは誰か。彼の夢はどこへ行くのか。
道化師めいた保険屋の示す脚本が、男たちの運命を導く。
現在と過去。罪と野心。
交互に描かれていた2つの時代が、次第に重なり合い混じり合う様子にワクワクする。
生演奏のドラムの響きが、不穏な予感のように物語に寄り添っていく。
人を殺めて権力の座につき、疑心暗鬼からより多くの人を手にかける。そうしているうちに、自分自身の望みや大切なものが何かも見失っていく。
『リチャード三世』や『マクベス』を思わせる血塗られた物語に、歪んだ笑いと哀愁が漂う。
劇団鹿殺しの本公演に流れるピュアで温かな印象の代わりに、虚無を見つめる少し哀しいまなざしが感じられる気がした。