満足度★★★★★
初演を見逃して残念に思っていたので、再演と聞いて喜んで観に行った。
レバノンでの内戦を背景に、母を亡くした男女の双子が、自らの家族のルーツを解き明かしていく物語だ。
麻実れいさんがその母として、1人の女性の10代から60代までを演じる。
カナダで暮らしていた年老いた女性。彼女は5年前のある日、突然心を閉ざし、言葉を失ったまま生きて死んだ。いや、5年の間に一度だけ、言葉を発したことがあった。その言葉の意味もあとになってからわかるのだけれど。
公証人から彼女の奇妙な遺言を聞かされた娘と息子は、反発や不本意な気持ちを抱きつつ母の言葉に従い、会ったこともない父と兄の消息を求めて母の母国を訪れる。
その国で双子は多くの人と出会い、話を聞く。双子はそれぞれに母の生涯を見出していく。そこで出会った真実。
世界はこんなにも残酷なのか。生きることはこんなにも過酷なのか。誰かを断罪して済むのなら、その方がよっぽど楽だと思えるのだけれど。
それでも。
知ることは残酷だ。しかし彼女はそれを乗り越えて、彼女自身に戻ったのだ。双子もまた真実を知り、真実を乗り越え、彼女をも乗り越えて、生きるだろう。
観終わったあと、胸の痛みとともにある種のカタルシスを感じたのは、そのためかもしれない。