劇構造をヤスミナ・レザの作品(映画 『おとなのけんか』、舞台シスカンパニー
『大人は、かく戦えり』など)世界に借りてはいるが独自の展開をさせており
キャスティングの妙とそれに応えた俳優陣の熱演怪演(?)に支えられ確かに
メリハリのあるおもしろい作品に仕上がっている。
ただ、この翻訳者の訳し癖なのか普通に使われている日本語の意味合いとは
ずれているカタカナ語を逃避的に多用するため聴いていて意味が取りづらい
ところがあったり邦題のネーミングなど翻訳へのこだわりというか粘り強さ
が欲しいところ(ゲーテ・インスティトゥートでの夏のリーディング公演の時
にも感じたが)。
また、会場の制約や時間不足があったのかもしれないが、最後の場面
(原著をみないと詳細はわからないが)は、あれでは単なるおまけ付け足しに
とられかねないので演出的にもう少し工夫が欲しい。ボードへの
Der Teufel träg(e)t Hosenanzug. の原語での書き込みは、日本語上演なので
日本語表記か日本語併記をとるべきで(ゲーテ・インスティトゥートのお先棒
を担いでいるところもありドイツ語学習の宣伝にはよいかもしれないが、
正対する客席の向かい側の年配の御婦人方が口をポカンと開けて?の顔を
されていたのが印象的)、演出者自らが、Der Teufel trägt Hosenanzug.
のごとく、言葉の壁で排除排斥の一例を実践してみせてくれた舞台でもあった
(Hosenanzugはパンツスーツのことで、全文でそれを身に着けている特定の物
か者を指す作品外の暗喩の意味もあるはずで現地の観客にはピンとくるのだろうが、
日本ではこれ以上は不明。そういう意味ではまさにホットすぎる現代劇で
それゆえかえって翻訳や演出がやっかいなのもわかるのだが)。