満足度★★★★
まだ日が残っているから現時点なのだが。
今年に観た演劇では群を抜いて心に残った。
この戯曲が、1964年に作られたというのを知り、納得した。
安保闘争が山を越え(うまい言葉が見つからない。決して無くなったわけではない)、世の中は東京オリンピック一色になっていた時期。
しだいに経済成長の「恩恵」が、国民を覆っていく時代だ。闘争になにかしら主体的に関わったものとしては、安保も、戦後処理も、日韓の問題も、なにも解決していないままで歴史が楽天的に進んでいることに我慢ならなかったはずだ。
そんな空気がひしひしと感じられる戯曲だけに、これを半世紀たった私たちが、どう表現し、どう受けとめるか、興味深くして赴いた。
俳小の役者の力量が十分に分かっている。
あとは演出家の技量だろう。
結論は、期待を裏切る? いや、期待通りの演劇であった。
戦術と戦略の、理想と手段の葛藤。
私はこんなことばかり考えながら観ていた。
蜷川演出に影響され、「金に糸目をつけない」舞台装置(これは私の偏見かもしれない)のかと思っていたが、予算の関係もあるのか、これは杞憂(笑)
手堅い演出、そんな印象だった。
なによりも私が感銘を受けたのは、戯曲の選択。
劇団の時代の読みの鋭さだ。
あらためて、私たちの日常で、理不尽な現実を前にした闘いで、感性の部分で触発されたことが嬉しく思えた。
1964年と2017年。
問題がいくつも置き去りされたままだ。