断罪 公演情報 劇団青年座「断罪」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

     青年座は頑固に日本の創作劇を上演し続けてきた。青年座が委嘱した劇作家は高い確率でいい作家になって、時代を画する戯曲を書いてきた。今年の古川、今回の中津留、ともに現在最も期待されている作家だ。おまけに青年座は新劇団」としては文学座と共に、「新劇団」がほとんど仲良しグループで傷をなめあっている中で、劇団活動ができる。破産していない。役者も養成できる。ともにアトリエを持ってそこでの公演できる。今回はその青年座劇場、客席200たらずのスペース公演である。劇団活動としては中津留登場は期待充分の作品である。客席は満席。芝居好きは知っている。この上演を実施しただけでも青年座は評価されるべきだろう。だが・・・
    今回の「断罪は」いくつもの注文がある。
    パンフによると積年の委嘱だったようだがこれは、テーマを舞台化する場の設定を誤ったのではないか。中級の芸能事務所の話だ。その事務所の代表的タレントがテレビで政治的発言をして事務所脱退に追い込まれ、そのタレント頼みの事務所経営が危うくなる。ここは商売一途とする経営者と、表現の自由を守ろうとする現場マネージャーとが対立するが、結局経営が「断罪」される。
    確かに、大手の芸能事務所が勝手な我儘で芸能界を壟断しているのは事実だろう。個人の自由を束縛して人権を侵しかねない縛りを男女関係にまでかけているのも事実だろう。体を売って役をとることもあるだろうし、事務所の給与が安いのも事実だろう。しかし、それが表現の自由を犯し、創作の未来を摘んでいるというのはドラマ的な対立としては無理ではないか。
    かつて、新劇団は自由に左翼賛美の演劇を上演してきた。組合をバックにした観客団体もあったがそれに支えられた新劇団の実際的なリーダーは、じつは資本家の家庭で育ったイイウチのボンボンだった。古い新劇団Sはやがて、アングラ劇団に粉砕されるが、そういうことは演劇界内のゴタゴタで、大衆はそれによって「知る権利」を失ったことなどない。芸能界の自由論議は遊戯にしかならなかったのである。今、劇中に描かれたような論議をしている芸能事務所のリアリティがない。
    ベースにリアリティがないので、登場人物にいろいろ背景を設けているがそれも絵で描いたようないつもの手で味気ない。皮肉なことに、青年座の役者は、トラッシュマスターズに比べれば格段にうまい。いつもは聞き取れない台詞も多いが、今回は全部聞こえる。今日は俳優陣はあまり調子がよくなく、しきりに噛んでいたが、それでも台詞の処理の速さが違う。動きもアンサンブルもいい。役もきちんと解釈する。対立する善玉の大家も悪玉の石母田も十分うまい。大家など可哀そうな位、一語一語を生かそうとする。安藤、津田の女優陣も脇の鑑というほどにうまい。だが、登場人物それぞれにリアリティがないのでその演技も空転する。そんなにムキニなることはないのに、とつい思ってしまう。
    トラッシュマスターズの役者でやったら、意外に現実感があったかもしれない。芝居と言うのは難しいものだとつくづく思った。2時間5分、休憩なし。

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    2017/12/13 23:23

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