『座敷わらし ―眠るは我が愛し子―』 公演情報 鬼の居ぬ間に「『座敷わらし ―眠るは我が愛し子―』」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

     衣擦れの音一つに、こちらの神経がピリリと反応する。そんな舞台だ。約55分と尺は短い。然し、実に濃密な時空を体験した。(花5つ☆)

    ネタバレBOX

    役者の演技は無論のこと、緊張感を持続させる演出、上演場所である古民家の風情、しっかり練られた脚本等、何れも素晴らしい。
     時は昭和初期、東北の寒村を思わせる小作農の家。妻・栄が人形を持って部屋に入ってくるが、子守唄のようなものを口ずさんでいる。と鋏を取り出し居もしない子の名を呼びながら、人形の首を切り落とす。その後、腹を裂き、中から内臓を取り出すという異様な導入部である。
     良く観ると暗がりの中たった1つの裸電球に照らされて、障子には何かの札が貼ってある。やがて野良仕事を終えた入り婿の夫・耕六が帰宅するが、食べる物も碌にないこと、妻の父・善次郎が病で臥せっていることなどが、徐々に明らかになる。
     居もしない子供の名を呼び、幻影と遊ぶ妻は、子を失くしたショックでおかしくなっている。而もその有様が並大抵のことではない。妻の幼馴染・礼子が、立ち寄っては何かと助けてくれるのだが、村の掟に縛られ地主には逆らえないという弱点も持つ。即ち貧乏籤は常に小作が引くという不条理が成立しており、余所から婿入りしてきた耕六には不合理極まりのない掟に映る。耕六の持ち出す逃散には、栄も善次郎も応じない。貧乏が嵩じてニッチもサッチも行かなくなっているのに、この地に留まり亡くなった子・三千夫のことは忘れて、新たに子を設けろと善次郎は言うのである。
     こんな状況下、耕六は栄を道連れに無理心中を図るが果たせずに終わる。
     閑話休題。初日が終わったばかりなので、これ以上のネタバレは控えておく。代わりと言っては何だが、ヒントを書いておこう。こけしという人形は誰でも知っていよう。ところで、この人形の名は何故ひらかな表記なのか? 漢字で表すとヤバイ事実が明らかになってしまうからではないのか? 因みに漢字では子消しと書くのではないか? 即ち間引きという歴史的現実を背景に親が自ら殺めた子の魂を弔い、自らの罪を忘れることの無いよう刻んだのが子消しの発祥ではなかったか? ということである。
     今作の抱えている歴史的闇は更に深いのだが、このヒントから、読者は何かを想像して欲しい。

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    2017/11/30 01:43

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