火山島 公演情報 劇団演奏舞台「火山島」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    物語は、舞台を3分割してオムニバスを入れ子構造のように展開させ、深層を抉るように紡がれる。テーマ性が色濃く観客に訴える公演。タイトル「火山島」は日本のどこかの島ではなく、日本という国そのものであり、テーマは国へ警鐘を鳴らすもの。消え入るような闘いの灯は、時を越え鮮烈な光として蘇ってくるのだろうか。
    (上演時間1時間20分)

    ネタバレBOX

    上手・下手側にそれぞれ大きな台座のようなスペース。中央は廊下のようで奥に段差があるスペース。上手側の登場人物は老女と孫娘、漁で生計を立てているようで、老女は網を編んでいる。下手側は商売を営んでいる夫婦。中央は風車守をしている老男、亡き妻が、その取り壊しに抗議している。

    3場面は、時代や設定の共通点は観えないが、ラストにはそれぞれの主張が同じ方向に向いていく。老女と孫娘の会話…老女の憂いは環境問題等もあり漁村の生活は厳しい。”砂山が動く(崩壊)”という言葉には、太平洋戦争で英霊になった人々の墓が埋没していく危機感の表れ。孫娘は村の活性化のため駐留軍の誘致を言い出す。まさしく軍需活況であり、意識の違いである。
    下手側は、妻は戦争中に敵の攻撃から逃げ回るうち、赤ん坊が泣き出し居場所を察知されないよう沼に沈めて殺してしまう。夜な夜なその悔悟に悩まされるが、夫は止むを得なかったと慰める。今は娘たちも生まれるが…。忘却への懼れとも見て取れる
    中央は風車を取り壊して、その跡地に原発を誘致する。その地で風力エネルギーを担ってきたが時代遅れといった感で描かれる。この風車守の男は妻を早く亡くしたが、3人の男の子を育て上げた。しかし戦争で…。

    3話から反戦・反原発への問題提起が浮かび上がる。必ずしも相互に緊密さは感じられないが、それぞれ単独話(2人会話劇)としても十分説得力のある内容である。演技は、抑制された素晴らしいものであるが、キャストによって力量の違いが観え感情移入がし難くなったのが少し残念だ。
    この劇団の特長は、生演奏の迫力と心地良さであろう。今回もその魅力を十分堪能した。

    これらの話によって理不尽な社会状況が重層的に浮かび上がり、何時マグマが爆発し人々を暗澹たる気持にさせるか、そんな予兆を思わせる不気味な状況を描く。そこに現代日本の姿が垣間見えてくる。ラスト、孫娘が「今度の戦争はいつ起きるの?」には戦慄する。

    次回公演を楽しみにしております。

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    2017/11/26 16:34

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