RUIKON 公演情報 アロック・DD・C「RUIKON」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    ダンスだけで物語を紡ぐというコンセプトの下、その難解さを少なくするためチラシはもちろん、上演前の舞台上の衝立にも古書風に見せた説明(あらすじ)書きがある。
    その説明により筋立ては理解しやすく丁寧な感じがする。一方、観客はその筋立てにダンス表現を当てはめることになり、物語のイメージがある程度誘導されるのではないか。観客一人ひとりが持つイメージを狭め、心象の自由度が少なくなったように思えたのが残念。
    ダンス、それによって表現される物語はしっかり寓意を含み、タイトル通り宗教色の濃い作品になっていた。
    (上演時間2時間 途中休憩10分含む)

    ネタバレBOX

    舞台は暗幕で囲い、上演前は先に記した古書風の説明文が書かれた衝立のみ。物語が始まると衝立を回転させ、赤布が両端から無造作に掛けられ、中央に不可解な文様が見える。同じようなものが上手側の暗幕にも取り付けられている。一瞬、月が欠けているような、また歯車が壊れたようにも見える。その漠とした形が不気味さを表し、物語の印象付けにもなっている。

    梗概…魂をふきこむ事のできる錬金術師によって、オートマタ(自動機械人形)は異世界のねずみと変わらぬ暮らしをし、子を生み家族を持つこともできた。しかし、人間社会同様、貧富の差があり財力でオートマタを差別することもあった。富豪だが孤独な雌ねずみ(カギヌワ)は唯一、子ができぬ事が悩みであった。そこで財力をもって雄ねずみと交尾する。そしてその毒牙が、貧しいながらも幸せなオートマタの家族(父親:テテ)に向けられた。 物語はカギヌワと一組の家族が交錯する寓話というもの。

    演者はねずみをイメージさせる化粧、衣装も灰・黒2色を基調としており、紐で尻尾を作っている。貧富の差は衣装の色(富豪は赤色も着用)で表す。観せる工夫、それはダンス表現にも表れていた。特にラスト近く、暗闇でペンライトを点滅させながら群舞する光景は、鬼火のように見え魂魄にも思える。ペンライトに照らし出される姿は、まさに”イコン画”のようだ。その時に流れる音楽も宗教曲で荘厳な感じである。演出は照明・音響等も含め宗教色の濃い作品にしているのが特徴である。その意味では”宗教画をダンスで再表現または再構築”しているようだ。
    少し分り難いのが、道化師の役割とオートマタのペンダントのような意味は何か。そしてカギヌワとテテの子・モナキリの誕生は、無理やりの「生」というか「聖」に繋がり、神への冒涜とも受け取ることもできるような…。

    物語は説明文を当てはめて観れば、容易に内容は理解できる。その意味では説明過多になり、観客がイメージする世界観が狭くなる。台詞のない身体表現のみで紡ぐ、そんな謳い文句であれば、もう少し説明内容に工夫があっても良かったのではないか。とは言え、少なすぎれば抽象的になりすぎて物語性が理解できず、面白みが失われてしまう。その匙(さじ)加減が難しいと思うが、この公演の生命線(楽しみ)はそこにあると思う。

    次回公演を楽しみにしております。

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    2017/11/23 13:45

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