「15」 公演情報 雀組ホエールズ「「15」」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    建前と本音、制度と心情といった対立しそうな軸を鮮明にすることで、問題の所在を明らかにして事の本質を鋭く突くような物語。しかし、観せ方は喜劇仕立てにすることによって楽しませながら考えさせるという巧みなもの。実に面白い。
    物語は予定調和か、はたまた以外な結末か…。

    ネタバレBOX

    舞台は「SUZUME BANK」の某支店内。上手側に通路、正面奥が出入り口(閉店後はシャッター)、客席寄りにはクッション椅子数個、下手側に受付カウンターを設えロビーといったイメージ。床は白・赤・黒の太線格子模様、上手側壁には窓があり全体的に明るく、スラプスチツク・コメディのイメージと合致する。

    物語はスクラム工業?の2人(社長と幹部社員:高校時代のラグビー部の先輩・後輩の関係)が新規技術開発のため融資相談のため来店しているところから始まる。結果は融資拒絶で社長は逃走してしまう。当時の金融背景として、ギリシャ国家破綻、大企業優遇の取り扱い等、典型的な銀行姿勢が描かれる。それから4年が経過した同銀行・支店で起こる事件を通して社会の理不尽・不道理、人の虚栄・無力を思わせる展開が次々に起こる。その都度、世の儚さと楽しさを輻輳して展開する。銀行強盗に押し入った兄弟、15歳の妹が拡張型心臓病で手術費用欲しさの犯行である。閉店間際(15時)にいた来店客を人質にして3億円を要求するが…。シャッターを閉めた後の行内は、一種の密室状態である。

    人情に対して建前を主張する支店長の対応が当時の銀行の姿勢を如実に表している。自分で考えず、慌てふためき右往左往する支店長の姿は銀行の実態そのもの。コンプライアンス(法令順守)という尤もらしい説明は、銀行組織を守ると同時に顧客保護という謳い文句にもなっていると思う。義理人情で融資は実行できないだろうが、そこに知恵を絞ってという発想が求められるようになってきた。そんなことが最近の金融庁の行政方針(例えば、「ベスト・プラクティス」の追求)に見られるが…。そんな堅い話(金融庁、警察機構という国家権力との対峙)を軽妙洒脱なコメディとして観(魅)せる演出は見事。さらに冒頭の融資拒絶した真の理由を明らかにし、いつの間にか全員を善人のように描く、というヒューマンドラマ仕立てにホッとする。

    次回公演を楽しみにしております。

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    2017/11/21 18:04

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