満足度★★★★
小劇場と言うと、甘えた自分探しや体験告白が多かったのにここ数年、社会実話派が多くなった。中では、トラッシュマスターズやチョコレートケーキなどが、素材的にもその切り口も従来の社会派演劇を超える作品を生み出してきた。それに次ぐ、というjacrowの新作は、大塚家具の父娘の社長争いである。タイトルも「骨と肉」何のことかと思っていたが、何のことはない只骨肉の争いと言うだけのことで芸がない。舞台も週刊誌で知っているような一族の相克と株主総会の経緯で、先の劇団がやり遂げたような事件の中から時代の生々しい人間像が立ち上がってくるということもない。俳優も父娘はともかく周りの大人たちはかなり苦しい。
しかし、小劇場が自分たちの身近の世界にいない人間たちに取り組むのは後日必ず役に立つ。一族の俳優たちが精彩がないのは、日常的な経験に頼っているからで、社外重役たちには経験がないだけに工夫の跡が見られる。見ているだけなら週刊誌をたちあげたような気楽な再現ドラマ的面白さだった。