満足度★★★★★
鑑賞日2017/09/30 (土) 13:00
価格2,700円
「青と遺伝子シリーズ」は理系の話だが、本作を0とする「存在と証明シリーズ」は文系の様子。中盤あたりから芸術とは?才能とは?なんてことがアタマの中を駆け巡る(後述)。また、奏絵のコミュ障っぽさと春真に猛抗議する時の彩歌の演技が真に迫っていて説得力があった。
奏絵の描いた絵に魅かれる彩歌、彩歌を最初は拒絶するがその歌を耳にして彼女を理解し自分と通ずるものを感じる奏絵……言葉を交わさずとも通じ合えるというの、似た体験をちょくちょくするので共感。
奏絵のコミュ障を緩和し、ひきこもりの義春を外出させた彩歌は内向的な人に外向性をもたらす「触媒」か?(笑)
また、奏絵のことを思って去ろうとする彩歌に「泣いた赤おに」の青鬼をも想起……そう言えば彩歌の衣装は青だし奏絵の衣装は赤だし、さしずめ本作は結末も勘案すると「幸福な泣いた赤おに」?
春真が彩歌に「もう奏絵と関わらないでくれ」と頼む場面で浮かんだのは「芸術家か人間性か」的なこと。しかしその二択ではなく「新たな面が現出する」ということもあろう。春真は「今までの売れ線の絵ではなくなる」ことを恐れたということか。芸術家の作風の変化は是か非か?の問題でもある。
絵画でなく言葉でコミュニケーションがとれるようになることでその後の絵が駄目になるならそれまでの絵は「何らかの欠損」によって産み出されていたことにならないか? それは「真の芸術」か? また、その欠損が補填されることで失われるようならそれは「真の才能」とは言えないのではないか?
奏絵が描く絵、彩歌と理解し合う前は暗い色彩でとがった部分もあるが、それ以後は柔らかくて色合いも明るくなる。毎回それをその場で描いている依田玲奈さんってば……。
あと、義春・春真兄弟の父親は名前に「春」の字が使われているよね?(笑)