満足度★★★★
漱石の夢十夜の第六夜は運慶が仁王を刻んでいる話である。その中で若い男が次のように言っている。
「…あの通りの眉や鼻が木の中に埋っているのを、鑿と槌の力で掘り出すまでだ。…」
また、漫画家のインタビューで「最初は自分が作り出したはずのキャラクタが途中から勝手に動き出して手に負えない」などということもしばしば聞く。
演劇でも作者によって発掘されることを待っている登場人物もまたたくさんいるだろう。待ちきれなくて飛び出してくる登場人物たちもいるかもしれない。そんな感じの話である。
岡部たかしさん演ずる脚本家が稽古を始めようとすると山崎一さん率いる「登場人物」の一家が現れる。彼らを見出してくれる「作者」を彼らの方から探しに来たのである。彼らの様子に興味を持った脚本家が稽古に来ていた役者を使って即席の演劇に仕立てようとする。「登場人物」はバーチャルな存在だが登場人物としてはそのものずばりの本物(リアル)である。一方役者はリアルな存在であるが登場人物としては偽物である。というようなことで双方の対立は激化して行く…。
そんな話がどんどん続くのだが観てのお楽しみである。問題はこういう話は始めるのは簡単だが終わらせるのが難しいことだ。この終わり方には私はあまり納得していないけれど、自分では「笑ってごまかす」くらいしか思いつかないのが情けない(笑)
ときどきこういうものを観て考えると脳の掃除になるのではないかと思った。
KAATは5階の大ホールは来たことがあるものの3階に中スタジオなどというものがあることは知らなかった。座席はチケットの10番刻みの番号順に入場しての自由席である。最前列の席に役者さんが座ったりするので絶対に前方がおすすめだ(もちろん役者さんが座る席はリザーブされている)。学校と違って前に座っても指名されることはない(笑)