満足度★★★★
客席へ案内されて文字通り幕が開くまでニヤけて高まってしまう、眼前のカーテンと想像で広がる風景
事件の日々でもあるけど人生の一日でもあり、故意に切り取られた物語を僕らは観ることになる
切り取っているのは作家のエゴなのか、客席を見下ろす僕ら観客なのか
人生における刹那を切り取って喜劇にも悲劇にもいかようにもできる作家が神ならば
観客は想像の余地という福音を与えられた敬虔なる信者てな感じで
この作品を笑いたい場面で笑えて、感情を揺らされる時に身を乗り出せる、僕の幸せ
この劇団の作品はいつも、蛇口から一滴ずつ落ちる水滴のような情感の伝わり方なのに、観終わるといつのまにかその水は踝から膝上、胸を浸し、そして口から僕の中へ注ぎ込まれて、仄暗い水の底に溺れてしまう
騒がしくて笑えるのに、思い出した時にBGMが流れない不思議な感覚
死者と生者が混在する劇場内。非日常に置かれた生者は滑稽で、死者は常に全てを受け入れて。
誰かに殺されて踏み越えるのではなく、自分で線を踏み越えて向こう側に行く物語。
椅子の背が並ぶ光景が墓地に見えた。田中さんの語り口でその場に引かれる線が美しかった