満足度★★★★
毎年この劇団が関西からやってくるのが楽しみだ。関西系劇団がその「関西ぶり」が売り物なのに、この劇団は泥臭さがない。今年、座付作者の上田誠が岸田戯曲賞を受けたが、遅すぎる。東京なら十年も前に受賞しているだろう。しかし、そんなことには恬淡として(いるかどうかは内部でないからわからないが)独特の舞台を作り続けてきた。ちょっと生活感を外し、知的でもあり、遊戯的でもあり、しかも時代の動きも抜け目なく入っている良質のエンタテイメントだ。今回も二十世紀とおぼしきパリの画学生の集まるアパルトマンと言う舞台設定で、亡くなった画家の残しただまし絵を処理しているうちに平面のだまし絵の世界が三次元の世界に現れる、と言う突飛なSF趣向で、絵画の芸術論から、デジタル社会の問題まで、さまざまなギャグが飛びかう。
これでもか、と言うほど同じシチュエーションを繰り返すのは、作者と観客の力相撲だ。俳優たちもまるでフランス人に見えないのに、臆することなく作中人物を演じる。中年なのに、学生芝居の良さが残っている。NHKのレギュらーの児童番組を持っているが、NHKもいいところに目を付けたものだ。
過去の作品でもすべては成功してはいないが、ワンアイデアを長く引き伸ばしてだれない、と言うのはこの作者の特技だ。だまし絵で行くと決めた今回の結果は、まずまずと言ったところだろう。べたなところのない乾いた笑いだが、満席の観客は笑いに沸く。同時代に出発した小劇場が息切れしたり、方向転換を余儀なくされたりする中で、ヨーロッパ企画は東京での公演数も多くなり劇場も大きくなった。客もついている。今後も楽しみに上京公演を楽しみに待っている。