奈落のシャイロック 公演情報 名取事務所「奈落のシャイロック」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★


    明治新劇史では、名高い左団次帰国後の明治座初演を素材にしたバックステージもの。
    作者・堤春恵はかねて明治演劇はお得意で、かつて見た鹿鳴館異聞」は面白かったし、評判も良かった、確か小劇場ながら演劇賞も受けた。日米の幾つもの大学で日本の伝統劇を学び、サントリー社長の息女と言う出自のよさがそのままのお行儀のいい作風で、下北沢の小劇場には似合わない。今回は、翻訳劇の日本初演とともに劇場改革を企んだ左団次と松居松葉の「ベニスの商人」上演が、劇場茶屋や下座の反感で頓挫するという史実を劇化している。前段の左団次帰国と時代背景の説明部分はわかり良く、またその性急な改革が頓挫する舞台を混乱の起きた明治座の奈落のシーンにまとめるというアイデアはいいのだが、そこで起きる事件が平板で盛り上がりに欠ける。混乱の原因が、演劇の中身ではなくて劇場システムの問題なので、演劇改革、新劇の誕生、女優の出現、伝統演劇との相克(日本では歌舞伎が強く、なかなか近代劇だ受け入れられなかった)など、人間的な表現が膨らむはずの本質的な演劇テーマが上滑りしてしまう。小芝居の添え物で女優をやってきた新井純(好演)の登場など面白いのだが生かし切れていない。期待されながら、また舞台ではいつも好演ながら、なぜかいい舞台に恵まれない森尾舞も、あい変わらず度胸のいい芝居なのだが、歌舞伎名優の娘が新劇に挑戦するという葛藤が弱い。女優陣の健闘に比べると肝心の男優陣が心もとない。脚本も後半は話が堂々巡りをしてふっきれない。
    面白い小芝居を出す名取事務所も、今回はすこし凝りすぎたか。しかし今日は満席で何よりだった。

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    2017/10/17 23:30

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