暗闇演劇「イヤホン」 公演情報 大川興業「暗闇演劇「イヤホン」」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    大川興業の暗闇劇は3回目。以前観たものとは脚本が違うが、視覚ではなく聴覚を刺激するという基本的なスタイルは同じ。なお、先の2公演時はペンライトのみであったが、今回はタイトルにある「イヤホン」も借り受けることになる。これによって舞台(空間)上だけではなく、別の空間との交信が一層立体感ある公演になっていたと思う。
    また、この状況になった経緯が分かり難いが、以降の展開は実に面白く楽しめた。
    (上演時間2時間)2017.10.11追記

    ネタバレBOX

    「庶民テロ」、または「デモクラシー・テロ」集団によって監禁、人質にされた人々の心理と行動・行為を暗闇の中で描いたもの。閉じ込められた場所が暗闇という設定であろうが、ラストの数分間のみ明転し場所(室内)の様子が分かるというもの。大半の時間は暗闇の中で当事者の聞こえる声、イヤホンから聞こえる囁き声のみ。

    演劇で第四の壁というのがあったと思うが、もともとこの公演では観えないから壁を意識(認識)することはない。むしろ、イヤホンを通じて舞台上のキャスト以外が、観客の聴覚を刺戟する。何となく第四の壁破りのような感じさえする。

    芝居は、脚本・演出・演技を始め美術・技術など、人の視覚・聴覚などで楽しむものだが、聴覚だけが鋭くなり、情景・状況は観客のイメージに委ねられる。観客の数だけシーンが想像され、心象形成が異なる。観えることで流れてしまう意識が、観えないことで集中する。この集中させる”力”は、脚本の面白さがないと惹きつけられない。

    公演は、今の日本が抱えている社会問題、それも喫緊の課題を提示(犯人の要求)している。人質、その家族に関係ない、そして対応が難しい事柄をどう解決して行くのか?大風呂敷的な要求は、実は一つひとつ丁寧に解きほぐし対応すれば解決の道が見えてくるというもの。それを置き去りにしている現代社会への痛烈な批判として描いているようだ。

    その(監禁・人質)状況下にあって、他人を思いやる気持ち。気持に余裕がない情況下でこそ、人の真価が問われる。その意味で、登場人物の一人ひとりの性格や背景を丁寧に説明し、緊迫した状況の中で優しくなって行く過程にホッとする。その感情の揺れ動き、変化が聴覚を通じて伝わる。

    最後に、公演内容に直接関係ないが、客席前後の間隔が狭いにもかかわず、後席の人が足を組みかえる都度、自分の背中に足が当たる(怒。暗闇で他観客も聴覚敏感で注意するのが憚れる状況だった)。またイヤホンを落とす人もいて、集中できない時があり残念であった。

    次回公演も楽しみにしております。

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    2017/10/09 10:58

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