きんかく九相 公演情報 劇団芝居屋かいとうらんま「きんかく九相」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    三島由紀夫の小説「金閣寺」と「九相」を題材に描いた公演は、美しい心象劇として印象に残る。小説は、1950年7月に実際に起きた「金閣寺放火事件」を基にしているのは周知のこと。
    公演は小説同様、主人公である学僧(川口)が金閣寺の美に憑りつかれ、放火するまでの経緯を一人称の告白という形で展開して行く。
    主人公の視点から観た美、死生観のようなものが静かに、時に荒々しく描いている。一方、戦時中の世相や無常さを京都の島原遊郭の芸妓達の視線を通して描かれる。学僧の内面、芸妓の外面という対照的な観せ方は、観念的に陥りそうな物語を公演として観(魅)せているところが好い。
    (上演時間1時間30分)

    ネタバレBOX

    舞台セットは、上手側・下手側に障子戸・畳敷き、それを奥に三重張りしている。中央は通路であるが、障子戸の開け閉めで情景・状況が変化して行く。上演前は上部から赤い布が吊るされている。物語が始まると、女優陣の和装(朱色の薄い道行のようなものを羽織り)と赤い布を用い乱舞する様は、業火のように思える。

    ずいぶん前に読んだ「金閣寺」は、吃音者の宿命、その学僧の前にある金閣寺に対し、色々な感情が入りじ 混じった名状しがたい心理や観念が書かれていたと思う。公演でも学僧(川口)が金閣寺に”思い”を廻らせていることは解る。そして戦中戦後という時代背景を取り込むことで、解り易くしている。金閣寺は美しくない、空っぽの存在である。日本の敗戦による無秩序、混乱は美しくもなく空虚の世界に投影している。自らの吃音という悩み、卑下した様子・姿は、小説とは違い生身の役者を通して立ち上がってくるようで面白い。また坊主(ごとうたくやサン)の飄々とした態度、そのやり取りも軽妙洒脱で肩の力がほどよく抜けて好かった。
    女優陣がいる遊郭置屋での生活.…恋しい人(軍人の死)、敗戦による駐留軍人との恋など愛憎劇、それでも強かに生き抜く女の強さを垣間見せる。着物姿、日本髪結い、小物・簪など観せる魅力も十分楽しませてくれる。

    さて、「九相」についての描きはどこか?登場人物の死生観そのもの、置屋での今まで(死んだような生き方)、これからの生き様が”(錯乱)死に様”となっていくことの暗示であろうか。公演全体が少し観念的(例えば「南泉斬猫(なんせんざんびょう)の話」でもあり、例えの話と同じように難しい解釈が含まれているようだ。もっとも、当日パンフの挨拶文にも「理解よりも『何かを感じる』ことをお楽しみいただき…」と書かれていた。

    演技等は、女優陣は和装でその姿態は妖艶、艶かしい。男優はみな頭髪を短く刈り込んで時代や設定人物に近いようにしている。また和尚、学生服など外見でも違和感なく物語りに入り込める。

    ラスト…終結部分について、実際の事件と小説では異なるが、公演では事件(小刀で切腹した-未遂に終わる)に合わせていた。また、女優陣が冒頭同様、赤い布等を羽織り乱舞しながら障子を破いていく、同時に天井からは大量の細い金色紙が舞い落ち炎、金箔を思わせる。学僧の切腹シーン、女優陣の業火シーン、その視覚的効果は、緊迫感があり情緒的でもある見事な演出であった。

    次回公演を楽しみにしております。

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    2017/10/09 10:52

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