満足度★★
劇場へ入って、今どき珍しい寓話風のプロセニアムアーチに布幕が引いてあるところで、??と黄信号がともったが、幕が開くと、もう「百鬼」といえば、コレと言うお化けの森のセットが現れ、ダンサー登場、型通りの鳥バタバタの群舞が始まって、赤信号。
「百鬼オペラ」とは何事かと見に行ったが、興業元は宣伝のキャッチフレーズに困って言って見ただけなのだ。1時間づつの2幕、何のことはないあまりうまくない名作歌入りショーなのだった。
ストーリーは芥川の中学生で必ず習う芥川の「蜘蛛の糸」、「藪の中」、羅生門、「鼻」を長田育恵が藪の中を軸に脚本にしたもので、構成台本としてはまずまずだが、せっかくの大冒険、イスラエルから演出・振り付けを呼んできても、途中で、歌謡曲まがいのの歌、急に暗黒舞踏まがいのダンスを、宙乗りと提灯の薄っぺらな日本画風セットでみせるのに忙しく、結局これが、愛の破綻、あるいは過剰の物語なのだと言われても、日本人にとっては、新しい発見とは言えず、一方かなり無理もあった。彼らと芥川作品との切実な接点が見えず、かといって娯楽に徹しましたと言うには程遠く、みる方も気合が入らない。何でイスラエルなんだろう、また、何をこの物語に乗せたかったのか、遂にわからずじまいだった。
大きな劇場でほとんどの席が一万円以上だ。せめて、俳優には「鼻」と「花」のアクセントの違い、読経は「ドキョー」で「ドクキョウ」ではない、と言うことくらいは日本人のスタッフが教えてやるべきだろう。せめてそれくらいはやってくれなければ、この席料には見合わない。