泥棒たち 公演情報 東京演劇アンサンブル「泥棒たち」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

     兎に角、演出するのが極めて難しい作品である。

    ネタバレBOX

    シーンが37もあるので場面転換が大変なのが、その理由の一つ。内容的にも作家の狙いが何処にあり、何を描きたいのかが中盤まで殆ど分からない。各シーンで登場する人物が複数であっても発される科白は、通常のダイアローグというより、どこかよそよそしい行き違いがある科白が多い為、モノローグの集積のように感じさせられる等々。原作がドイツで上演された際にも演劇作品として高い評価は受けたものの、何が表現されているのかについては理解した者が極めて少なかったという。確かに難物である。演出家の苦労は推して知るべしである。更に今作は、大事な役柄にかなり想定年齢の若い人物が設定されている為、日本の演劇状況では、中国や韓国のように演劇を演じる為の方法にティーンの頃から徹底的にアプローチし、技術を習得するシステムがまだまだ弱い為、若手には、基礎の基礎から仕込まなければならないという事情もある。(無論、能や歌舞伎、文楽などの伝統芸能は別であるが)
     以上のような様々な困難にも関わらず、中央に設えられた斜面の両サイドに設けられ線路の上を前後にスライドさせることのできる舞台セットの発明が場転の煩雑さを解消し、舞台上演の流れを寸断せずに物語を紡がせることに成功している点、公演開始後にも追加で行われた稽古などによって、役者陣の演技に喝が入ったことにより作家の意図を表現することが可能となっている。その結果、作家が表層で表現したことを通じて表明したことが、透かし見えてくる。何故、登場人物相互の間に不如意や擦れ違い、ぎくしゃくしたようなよそよそしい感じが流れるのか? に対する納得のゆく理由として。
    それは現代の極度に数式化され極大化された利潤を追求し続ける資本によって、生きとし生ける者が、本来の生にとって最も本源的で、その生物としての振る舞いに相応しい大切なもの・ことを収奪されたことをあてこすっているように思われる。収奪されたもの・こととは、本能としてのラブであり、大切な人々との心地よい関係であり、命の喜びである。この点に気付いた時、実に苦い認識が、ヨーロッパで最も勤勉で合目的的な生活形態を持つドイツで顕著に意識されるに至ったのではないかと思われる。洋の東西の様々な異質性にも拘わらず今作が上演対象として選ばれているのは、これまた、この劇団の意識の高さを示しているであろう。つまりアメリカ流の収奪資本主義に同調する日本とEUの牽引役としてある程度この潮流に合わせざるを得ないドイツの状況との類似を見抜いている証を。

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    2017/09/14 13:03

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  • 後半戦も気張って駆け抜けて下さい。
               長谷川(ハンダラ)拝 

    2017/09/14 13:06

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