期待度♪♪♪♪♪
果たして今が、満州国を見直す時期なのかどうかはわからない。いつでも見直す時期にあるとも言えるし、そうであるならば、ことさら声を上げて見直すことも必要ないのだろう。
興味があるのは、この「満州国演義」が、船戸与一の遺作であり、連載を途中で辞めて書き下ろしにしており、彼の作品しては他に群を抜いての長編であるということである。
船戸氏は、満州国の時代を知らない。終戦1年前に生まれた彼は、成長と共に戦後の空気を感じ始め、戦争が「あった」ことに思いめぐらすことがあったと想像される。
それくらいの感受性は、彼の多作ぶり、エンターティメントへの執着をみれば、容易に想像がつく。では、なぜ満州国かということである。
彼に「満州国演義」を書かせた衝動は、どこからきたのか、とても知りたい。「文学は歴史の従者ではないが、歴史は文学の玩具でもない」船戸与一のパッションの一部を、敷島兄弟を通して観られたらと思う。