満足度★★★★★
鑑賞日2017/09/06 (水) 19:30
座席1階1列
「巨獣の定理」何とも興味を引くタイトルである。「巨獣」はその世界、この場合秋川家を支配する者という意味でもあり、「ビヒモス」は悪魔の意味でもでも使われるというから、秋川家に棲まう悪魔という意味でもあろうか。「定理」とは真なる命題だから、推測するに「支配する者あるいは悪魔によって導き出された真なる解答」とでも意味するのか。
原作となった「殺人鬼」に比べると、かなり凝ったタイトルだけれど、やはり、観劇欲をそそるという意味では、秀逸なタイトルだと思う。
初日のせいか、役者の皆さま少し噛むことが多かったようで気になりました。論争劇なので、どうしてもマイナスです。でも逆にそれがなければ、かなりテンポのよい、観客を引き付けるよい芝居だと思いました。
女中部屋を舞台にし、本来の主人公である人物をほぼも出さない(確か「Dの再審」もそうでしたよね、到着しない明智小五郎とか)趣向も、舞台に現れない惨劇や混乱を、観客に想像させるということで、逆にこの連続殺人事件のスケールの大きさを感じさせるという点で成功していたと思います。
役者さんとしては、何といっても森尾繁弘、島田雅之、遊佐邦博の御3人が、舞台の柱として、役の心理の機微を演じながらも、うまくペースを作っていました。
さて、本作は原作(読んでいない)と犯人が違うのかしら、推理劇なのでネタバレになるので、詳しいことはネタバレということで。
ちょっとした不満を2つ。
1.最前列の席は地獄。足元が狭くて、足が拘束具で締め付けられるように苦しい。Mの世界。何、こ れは体験型ミステリー?
2.次回の公演は来年9月。これは仕方ないとしても、「Dの再審」再演とは残念。もち
ろん、再演でブラッシュアップしたものも観たいけれど。せっかくなのだから、この
路線の新作で、しばらくは行って欲しかったなあ。(まだ、来年に新作をやらないと
決まったわけではないかもしれないけれど)版権の切れたミステリーを舞台化するな
んて、興味深いですよ。「ドグラマグラ」や江戸川乱歩除くと、そんな舞台そうそう
ないですから。小栗虫太郎、海野十三、大阪圭吉等々、素材に事欠かないのに。