おんわたし 公演情報 SPIRAL MOON「おんわたし」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    鑑賞日2017/07/13 (木) 14:00

    沖縄の小さな島の郵便局を舞台に、ここに住む人、出ていく人、訪れる人の
    秘めた心情と温かな交差が描かれる。
    波の音と風が心地よい郵便局のセットが素晴らしい。
    首振りの扇風機がカーテンを揺らし、出演者の髪を揺らし、客席に島の風を吹き込む。
    解りやすい登場人物のキャラが次第に陰影を帯びていくエピソードが秀逸。
    この展開、この受容の精神は、やはり「おんわたし」の精神が根付く沖縄ならではだろう。
    観客に委ねる部分が心地よくもあるが、同時に物足りなさも感じるのは要求し過ぎか…。

    ネタバレBOX

    会場に入ると風が吹いている。
    上手には、郵便局おなじみお取り寄せ名産品の見本、テーブルと椅子、
    入り口の外には石垣と赤い花が見えて南国らしさが漂う。
    下手は一段高い畳敷きの事務スペースで、奥は郵便局長の居住スペースになっている。
    局長は今、浜で拾ったコーラの瓶に入っていた10年前の手紙に返事を書くことに夢中。
    近所の人々が集まってアイスコーヒーを飲んだりするのんびりしたこの郵便局に
    ある日東京からひとりの青年が保護司に連れられて来る。
    誰にも笑顔を見せないこの青年は一体…。

    郵便局に集まって来る人々のキャラが楽しい。
    バイトながらしっかり郵便局を切り盛りするおきゃん(早川紗代)、
    「嫁が欲しい」畑をやってる41歳の吾郎(保倉大朔)、
    民宿経営者の庄吉(牧野達哉)など、皆個性豊かで温かい。
    青年(榎本悟)の素性を知った後の、周囲の態度の変化にもそれぞれのキャラが反映される。

    局長が返事を書いたボトルメッセージの少女に代わって島を訪れたのは、
    その母親(秋葉舞滝子)だった。
    子育ての失敗から娘を喪ったことを10年間悔やみ続ける母親と、
    片や10年間、罪を償って外へ出た青年が「おんわたし」の島で出会うというエピソードが
    主軸でありそれが大変良かったと思う。
    共に苦しい10年を過ごした2人が、初めて心を通わせる相手として相応しい。
    “恩を受けたらその人ではなく、隣の人に返す”という島の優しいルールが生きる。

    青年の“家族でいられなくなるほどの”罪が何だったのか具体的には示されないが
    それは観る人の想像で良いと思う。
    でもあのあと彼がどう変化したのかを知りたい気がした。
    私の観方が浅いせいかもしれないが、保護司の徹底的な庇護のもとにあった青年が
    そこから一歩踏み出せたのか、意識の変化にとどまったのか、それが観たかった。

    「おんわたし」を目に見えるかたちで、というのは作者の意図に反するのかもしれない。
    でも“見て安心したい”と思ったのだ。
    演じる榎本悟さんの硬い表情や緊張した動きには“制限された人生”が色濃く出ていた。
    本当の更生は、そこから一歩踏み出して初めてスタートするのだと思う。
    彼の自我と更生の第一歩を目で見て安心したいというのは私の身勝手かもしれないが
    それは“苦し気な更生への道”を演じる榎本さんがとても良かったからに他ならない。

    最初はただの”合コン好き”だった吾郎が次第に魅力的に見えてくる。
    演じる保倉さんの他の芝居を観たいと思った。
    座組みの良さが感じられる作品だった。







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    2017/07/13 17:06

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