満足度★★★★
フライヤーが暗示するがごとく、ストーリーはしっかりしていながらも、どこか奇妙。
その奇妙さが観終わった後、時間が経つほどにじわじわと沁み込んできます。
あくまでも個人的解釈ですが、本作は都会に強く強く憧れる農家の女の子が見た壮大なる夢の世界だったのではないだろうか。
私がまだ地方で生活し東京に憧れを抱いていた頃、東京のイメージの雛型はTVドラマ「もう誰も愛さない」だった。
若い人はおそらく知らない昔のドラマだが、都会の人工的な輝き、お色気と同時に生き馬の目を抜く壮絶な大人達の打算・裏切り・復讐を描いたサスペンスドラマで、幼い思考回路の私には「東京」はお金を稼げば夢のようなオシャレな生活を送れ、その一方怖い大人がいっぱいで調子にのると直ぐに罠にはめられる油断できない所、そんなイメージが出来上がっていた。
もし私が上京する機会に恵まれず悶々と東京への想いと野心を募らせたまま事故等で深い眠りに落ちてしまったとしたら、
そこで見る夢はまさに本作の世界そのものではないかと思えるのです。
夢先案内人は怪しげな車掌さん。
辿り着いた都会の雑踏、混沌、怖い大人、ブラック企業、さらに一歩踏み込んだ先にはアブノーマルなエロの世界。
それでもその波にガムシャラに乗ろうとする女の子。
成功への階段を必死に登るその先に・・・
野心を持った女の子のイメージで形成された夢の中の世界として解釈すると、本作のあらゆる事に合点がいき、作品を美味しく咀嚼できるのでした。