満足度★★★★
二十数年経って、当時見逃した映画がDVD化されてTSUTAYAの棚に並ぶ。『ドグラマグラ』を手に取ったのはつい昨年のこと。松本俊夫監督特集でよく掛っていた『修羅』『薔薇の葬列』も一昨年、大森でようやくお目見え。生きてる間に観られた幸運をかみしめた。
さて、夢野久作の原作は、文庫本が長らく本棚に並んでいるが開いていない部類。従って本作の印象といえば映画の印象、即ち医師正木役・桂枝雀の怪演であった。
今回の舞台をみて「原作」への関心が首をもたげてきた。怪奇なミステリー作品には怪奇な人物像が似合う。「私」役はその強烈さに翻弄され、受動的であやふやなまま事態を観る者として存在し、最後になって中心的な謎に迫る構成が可能になる。それが今回の舞台は全般に挑戦的な演出が施され、熟練とは言えない俳優たちがこの趣向と素手で格闘しているという印象である。終盤に至って「鐘下節」が炸裂するが、これが大胆な脚色なのか原作を踏まえた台詞なのか・・原作を知りたく思った所以。
隅に向かって「闇」が深まる地下劇場space雑遊の利点が照明ともども発揮され、装置・音響への注力も加減なし。