Die arabische Nacht|アラビアの夜 公演情報 shelf「Die arabische Nacht|アラビアの夜」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

     今作の作家は、ローラント・シンメルプフェニヒと言う作家で、現代ドイツ語圏で最も多くその作品が上演されると評判の作家である。1967年西ドイツ生まれというから50歳ほどの作家ということになる。今作の舞台はかつてホテルだった学芸大学のCLASKAというアトリエでの公演だ。現時点で花よつ☆(追記2017.6.21)

    ネタバレBOX

    Shelfの公演は、キッドアイラックや春風舎、横浜の古いビルの一室、そして今回のギャラリーといった非劇場の公演が多いようである。まあ、春風舎は一応小劇場ではあるが。何れにせよ、ギャラリーの床はそのままで、床面に白い長方形が描かれ、客席は品川方面に向いている本物の窓の前を除く3辺に沿って作られている。因みに窓には赤い文字・而も英語表記で、成田空港までの距離は64.2Km、品川4167mと書いてある他、床には、劇中の科白やエントランスの位置、物語の鍵になる鍵束の落ちる位置、回廊、唯一実際に置いてある家具らしい家具であるソファーの位置指定、実物は無いが在るとされているサイドテーブルが矢張りアルファベットで記されていたりする。他小道具としてコニャックの少し残った瓶。ソファの周りに脱ぎ散らされた女物の衣類そして、ソファには女が寝そべっている。これだけ舞台美術がシンプルだと、想像力を最大限に強いる舞台だということが、良い刺激となって観客に伝わる。而も異国情緒のエッセンスであるアルファベットが部屋中に踊っていると言う訳だ。象徴性でいうならば、窓に書かれている外界へのアプローチが、閉鎖系としての上演中の劇空間に対する現実世界への通路(窓口)を表していると同時にヨーロッパ人にとってのアラブ人、アラブ世界という異国趣味をも表象している。無論、この話はそんなに単純なものではない。但し、それが日本人に簡単に理解できるという話ではさらさらない。調べれば調べるほど深みの増す作品であろう。
     アラブ系文学の代表作として、誰もが即座に思いつくのが「千一夜物語」だろうが、今作には、この物語に出てきそうな、ヨーロッパから見たアラブ世界の魔法の感覚のようなものが感じられる。現在に即して言えば、ボルヘスやマルケスに代表されるようなラテンアメリカ作家のマジックリアリズムに近いと言えるのかも知れぬ。何れにせよ、移民が人口の多くを占めるヨーロッパ先進国の日常空間に於いて、異国文化に対する様々な反応や戸惑い、憧憬や反発が複雑に絡まり合って成立している状況を感覚的受容を含めて上手く吸い上げた作品ということなのであろう。残念乍ら、自分がドイツ人と話をする時はフランス語を使っているので、フランス語のできるドイツ人としか基本的には話さないのだが、その狭い窓から見えたのは以上のような世界であった。

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    2017/06/06 14:19

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