粛々と運針 公演情報 iaku「粛々と運針」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    90分。

    ネタバレBOX

    一(尾方宣久)…築野家長男。実家で母と二人暮らし。高卒後同じコンビニでバイトの高齢フリーター。膵臓癌の母の治療を望んでいる。
    紘(近藤フク)…一の弟。既婚。家を出て久しくあまり帰省していない。子供を作る気はない。
    沙都子(伊藤えりこ)…應介の妻。仕事はやめたくない。應介と二人で贅沢して、思い描いた人生を送りたいと、出産に対して否定的。
    應介(市原文太郎)…沙都子の夫。沙都子の妊娠疑いに動揺し、出産の可能性を考える。仕事が好きでもなく、主夫でもよいと考えている。
    結(佐藤幸子)…一らの母。
    糸(橋爪未萌里)…沙都子が身ごもった子。

    築野家の会話と田熊家の会話と結と糸の会話を順繰りに展開し、中盤から築野と田熊の4人での議論に突入し、母の生死と身ごもった子の生死と自分らの人生について想いがぶつかり合う。

    いつもより笑い控えめな印象。
    すでに死を覚悟した結は終始穏やかで、息子二人が見舞いにきたことがうれしいと微笑む。一方の糸は、夫婦喧嘩にも似た自分の命についてやりあう両親を見て涙目になってどうしようとうろたえる。議論の当事者であるけど、議論には参加せず(できず)って人間を配置し、そこのリアクションも客に見せることで作品に奥行きができてた。二人が序盤で話してた桜の木でいえば、二人は桜の木そのもので、当事者の意見とは別に進行する話の残酷さみたいなもの(命を奪う側の主張との落差)に、唸った。

    一方で、沙都子の子を産みたくない理由も、理解できるなと感じてしまった。命を軽く扱っているワケではないけど、自分の人生というのもまたかけがえのないものだから。命とか人生とか、重いもの背負いたくないけど背負わざるを得ない、そんな一般人の叫びみたいなセリフにしびれた。
    一の飄々とした雰囲気と、リアリストな紘の会話もユーモアとリアルさが混じって聴きごたえあった。ラスト、母の彼氏?の金沢さんから母が危険だと知らされ、「泣いてないぜ」という一の背中に、辛辣な作品の根底にやさしさのようなものが流れているようでコレもグッときた。いい〆だった。

    沙都子と糸の髪型が同じだった?のも上手いなと思う。

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    2017/06/04 18:17

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