木ノ下歌舞伎『東海道四谷怪談ー通し上演ー』 公演情報 木ノ下歌舞伎「木ノ下歌舞伎『東海道四谷怪談ー通し上演ー』」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    ネタばれ

    ネタバレBOX

    木ノ下歌舞伎の『東海道四谷怪談』を観劇。

    今作は鶴屋南北のオリジナルに沿って、抜粋版ではなく、通し上演で、公演時間は6時間だ。
    初演時は、「忠臣蔵」と「四谷怪談」を2日間かけて、1日目に両作品の前半部分、2日目に両作品の後半部分、そしてラストは討ち入りという展開で、表の忠臣蔵、裏の四谷怪談になっているのがミソで、両作品を観る事によって、吉良上野介に復讐を誓う武士たちと、その武家社会に翻弄されながらも、生きていかなければいけない市井の人間模様が描かれている。
    「忠臣蔵」を観ることは出来ないが、今作では、浅野内匠頭の藩が、お家断絶になってしまい、それによって生きてく事すら困難な状態になったの武士と庶民たちの話である。

    今作は、内容は一切変えずに、セリフは現代口語、背景も現代の様である。歌舞伎として描いておらず、あくまでも現代演劇として描いている。
    伊藤喜兵衛にそそのかされて、孫のお梅と夫婦になってしまう伊右衛門、そしてその策略の生贄になったのはお岩で、彼女が呪ったのは伊右衛門ではなく伊藤喜兵衛、惚れた女欲しさに人を殺めたのが、それは以前に世話になった方の子息、そしてやっと手に入れた女は実の妹で、近親相関になってしまう有様、そして病で、討ち入りに参加出来ずにいる又之丞に、命をかけてまで、薬を手に入れようとそる小仏子平などなど、庶民は社会と関係を持たずには生きてはいけないにせよ、それを得るにはあまりにも代償が大きすぎて、生きる事さえ命がけだ。
    そんな彼らの生き様を現代演劇という手法で、描ききっているからか、鶴屋南北の書いた当時のテーマが、現代でもいとも簡単に掴み取れるのが、今作の面白さであろう。
    そして6時間という長尺ながら、飽きもせず、退屈もせず、疲れもせず、まだまだ観れるぞ!という気分にさせてくれる良作に出合うのは、今の現代では稀有である。

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    2017/05/30 11:35

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