十二人の怒れる男たち 公演情報 俳優座劇場「十二人の怒れる男たち」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    テレビに始まり映画にもなった裁判劇の演劇版。テレビはナマ時代とあって、見ることはできないが、映画から想像する限り、この作品は書かれてからほぼ60年メディアによってそれほど変わっていないようだ。それでも上演が続くのは、社会劇としては珍しい。古典的傑作と言われるゆえんであろう。しかし、この作品は陪審員室一室の中に現在の民主主義社会の様々な問題を、縮図化したようなところがあり、時代の焦点によって、作る側も見る側も変わってくる。例えば、冤罪事件が多かった前世紀中葉なら裁判制度への批判が注目されただろうが、今は、こういう制度しかない現代社会に生きる市民の不安が焦点になる。
    この公苑は、昔の新劇各劇団出身者によるプロデュース公演で、良くも悪くもその特徴が出た。いい点を挙げれば、台詞がよく聞こえる事。(劇場のせいもあるが)しかし、演技となるとこれはいささかでも今の観客に訴えようとしているならかつての新劇の惰性に頼っていると言われても仕方がない。今生きている人間の息吹がまるで感じられず、外国人のフリによる吹き替え演劇のようだ。それでも原作はよく出来ているので、昔の演劇として楽しめるが、この作品のキモである現代にも通じる市民生活のルールに潜む問題は全然伝わってこない。今上演するなら、そこだろう。
    大劇団であった俳優座が、こういう古典的テキストを取り上げて再演するのは意味のある面白い企画と思うが、テキストをかつての再現に終わらせては折角の努力もむなしいのではないか。

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    2017/05/19 12:35

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