Rは決して爪を噛まない 公演情報 かーんず企画「Rは決して爪を噛まない」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    一昔前は「一家に1台」であった電話機が、携帯電話の登場により「一人に1台」となり、スマートフォンの登場で、更に新たな機能が実装されてきている。同様に、数(十)年先には、大半の人の隣にロボットが寄り添っている光景が…、そんなことを思わせるような公演である。
    (前説では上演時間1時間40分、実際はもう少し長い)

    ネタバレBOX

    舞台は暗幕で囲い、中央にBOX椅子が数個。シーンによってコーヒーを置く棚や絵画が運び込まれる。BOX椅子は白と黒の面があり、人間主導の場面とロボット・通称Rが主導する場面によって、客席に向ける色面が違うようだ。

    梗概…発達した人工知能を搭載した人型ロボット・Rは人間に限りなく近づくことを願い、人間らしさ(「振る舞い」、「空気を読む」等)を取り込みたいと専門教育機関で習得の努力をしている。その結果、完全なるパートナーとなるはずが、その関係性に変化が生じる。
    AIが自ら学習することで人類の知性を超えてしまうIT界の用語「シンギュラリティ」(技術的特異点)を耳にし、記事で読んだりもする。最近ではAIが囲碁、将棋という勝負世界で話題にもなった。

    個々の日常生活に不可欠になったコンピューターは逆に人間の「個」を揺らがせ、その人間でなくてはならない仕事や相手を失わせてしまうという皮肉へ。この公演、人間とRの関係は、従順でありその立場は逆転しない分、かえって永遠に続きそうである。しかしアップグレードと汎用性を持つRは成長し続け、人間がその成長(より人間らしさ)に追いつかなくなる。人間が持つ嫉妬、傲慢、欲望という暗部がなく従順ゆえに始末に悪い。
    人間が目指さした合理的・利便性の先にある幸福とは…この公演では怠惰の一途。そこに人が生きていく存在・価値とは…を問うような。

    物語としては面白いと思うが、アプローチとしては既成化されているようで、新規さに乏しいのが残念。素舞台に近いが、演技で場景・状況を体現しており物語は分かり易い。時間的経過…老け役もなかなか様になっていた。
    そういえば、ロボット・Rは爪を噛まないが、人間の心理的な面から”爪を噛んだ”シーンはあっただろうか?

    次回公演を楽しみにしております。

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    2017/05/07 11:11

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